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がんは2種類 固形がんと血液がん

がんを大きく2つに分けると、臓器からがんが生じる固形がんと、血液がんに分類されます。

特定の臓器から生じ塊を形成し、全身に転移してゆく固形がんと比べ、血液がんは塊を形成しないで増殖することが多いという特徴があります。

血液がんは、あまり緩和ケア部門に依頼が来ない、という話を漏れ聞きます。

しかし私が一緒に仕事をさせて頂いた血液内科の先生方は非常に先駆的で、緩和ケアを体得かつよく理解しておられ、積極的に依頼をくださり血液がんの患者さんに多数緩和ケアを行って参りました

おかげさまで私も数々の血液がんの緩和ケア経験を培うことができました。

血液がんが緩和ケア部門に依頼が来にくいのにはある理由があります

一方でだからといって緩和ケアが必要ではないかというとけしてそうではなく、固形がんと同様に緩和ケアは必要だと断言申し上げます。私が協働した血液内科の専門医の先生方はそれを十分知悉されていたため、依頼をしてくれたということになりますが、病院によっては一例も緩和ケア医に依頼しないという報告も聞いており、とても残念なことです。

ではなぜ依頼が来にくいのでしょうか?

 

血液のがんは抗がん剤がとてもよく効くために 症状も消失が早い(効けば)

塊を形成している固形がんは、抗がん剤が効いて塊が小さくなるまでには、ある程度時間がかかります。

塊(腫瘤)が症状の原因になっている場合、症状の緩和にもある程度時間がかかる、ということです。

しかし血液のがんの場合は、抗がん剤による腫瘍細胞への効果が早く出ます。

したがって、抗がん剤が効いた場合の症状緩和のスピードはとても早いです。

例えば急性白血病は骨痛を起こします。

急性骨髄性白血病(がん情報サービス)

白血病細胞が臓器に浸潤するため、このような症状が出ます。

この痛みは、抗がん剤治療が奏効すると、速やかに緩和されます。

固形がんでも抗がん剤が効けば症状緩和+延命の効果が得られますが、血液がんではそれが顕著であるため、がん治療=緩和ケアという感覚が強く現場にあります

それが、専門的緩和ケアがなくてもすべて症状緩和できる、という誤った観念と結びついてしまい、「どんなに希望しても緩和ケアに依頼してくれなかった」という体験談を私も何度か伺ったことがありますが、そんな悲しい事象につながってしまいます。

あらたまっての緩和ケア技術が不要だと感じてしまっているようです。

確かに、相当末期の状態になる前には、血液がんの抗がん剤治療は症状緩和にも寄与することが多いのです。

しかしそれでも末期になる方はいます。

その時に、どのように緩和すべきでしょうか?

そう、緩和ケアの技術がやはり必要になるのです。

 

急性白血病の高度進行期、何が問題になるか

身体の苦痛

骨痛や頭痛などが出現してきます。

重篤な血液異常があるため、NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)は使用しづらいです。

しかしアセトアミノフェンだけでは症状が抑え切れないことも多いです。

医療用麻薬の適切な調整で骨痛等は緩和することが可能です。

ただし次の記載するように、ある症状が問題になるため、医療用麻薬の調整は細心の注意を払って行わねばなりません

どのがんの場合も、医療用麻薬の調整は繊細に行うべきですが、こと◯◯◯になっている患者さんや◯◯◯の発症リスクが高い患者さんには、できれば専門家の関与が望ましいです。

◯◯◯に入る言葉、皆さんは何だと思われますか?

 

精神症状

(ここらへんから、やや読んでいるのが辛くなった方は無理して読まなくて良いと存じます。役に立つ方がいると思うので、書きます)

 

白血病の死因として、出血死や感染症死が問題となります。

重篤な血液異常から、正常な白血球が少なくなり、感染に対して脆弱になります。

すると感染が散発・持続することとなります。

感染が持続し、またそれに伴い炎症が高度に続くと、非常にせん妄を起こしやすくなります。

せん妄は医療用麻薬で悪くなる可能性があります。

一方で、痛み自体もせん妄を悪化させるため、医療用麻薬を使用しないあるいは少なすぎるのも痛み→せん妄悪化医療用麻薬が多すぎるのも→せん妄悪化、となります。

このどちらに傾いても難しいところを、またそもそも白血病終末期の感染症がほぼコントロールできない状況では医療用麻薬を使っていてもいなくても制御困難なせん妄になることも少なくない中を、微妙なバランスを取って間断ない調整で諸薬剤を用いねばなりません

内科的な知識もフルに動員する必要があります。

以上より、白血病の最終末期もせん妄が問題となります。

十分な対処が必要です。

 

急性白血病のその他の問題

白血病の抗がん剤治療は、多くの進行固形がんの抗がん剤治療と異なり、抗がん剤だけで治る可能性も相応にあります(ただしタイプ等によって差異はある)。

抗がん剤の副作用も必発ですし、骨髄移植においても同様です。

それに関しては、まさしく血液内科医の重要な専門領域であり、血液病の専門家の十分な対処・ケアが必要です。

一般に急性白血病の治療には長期間を要します。

幅広い年齢層に起こるがんなので、社会生活への影響や経済的諸問題、それに伴う心理的負担など、緩和ケア的な観点からも対処・ケアが必要な状況は頻々と存在します。

身体的苦痛自体は抗がん剤治療で緩和されることも多いのですが、上記のようなその他の問題のケアも重要ですし、いざ終末期的な状況になると、痛みやせん妄など緩和ケアの専門知識が必要な局面は多々あります。

血液がんの患者さんやご家族は、緩和ケアが縁遠いと思っていらっしゃることもあるので、上述してきたように、血液がんでも緩和ケアを受ける必要があるし、病院やその他の緩和ケア部門を利用することもできる、ということを知っておかれると良いでしょう。

早期からの緩和ケア外来相談 緩和ケア医(緩和医療専門医)大津秀一

 

 

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About 大津 秀一

緩和医療専門医/緩和クリエーター。数千人の患者さんの緩和ケア、終末期医療に携わり、症状緩和のエキスパートとして活動している。著書や講演活動で、一般に向けて緩和ケアや終末期ケアについてわかりやすくお伝えすることをライフワークとしている。