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末期ガンの本当に最後の症状

早期から緩和ケアが必要なことは、いつも皆さんに強調している通りです。

末期になってからの緩和ケアは絶対的に遅いです。

そうなる前に手を打って、準備をし終わる必要があります。

この記事をご覧の皆さんは、末期の状態に興味・関心があったり、あるいはそれを恐れていたり、ご家族がそのような状態に近づきつつあるので、情報を得たい等の様々なお気持ちからだと思います。

まさしくそのような状態の診断と治療の専門家たる緩和ケア専門医(正確には緩和医療専門医)の私が解説します。

なお、2019年3月現在で、緩和医療専門医は全国に208名しかいません(医師数は30万人以上です)。

 

2011年発表 がん終末期予後判断指針

そのような知りたい皆さんのために、アメーバオフィシャルブログで、2011年4月に、がん終末期予後判断指針(大津作成)を掲載しました。

現在に至るまで、非常にたくさんの方に読んで頂いている指針です。

それは次のようになります(転載します)。

がん終末期予後判断指針(大津版)

全例に当てはまるわけではないが、予後判断の参考に指針を示す。
がんの場合は、予後2カ月くらいから急速に状態が悪化する。
「悪くなり始めると早い」「悪くなってから色々準備をしても間に合いにくい」
これを医療者間・家族間・場合によっては患者と共有する必要がある。

① 余命短い月単位(余命1~2カ月以内)

・疼痛以外の苦痛症状の出現(疼痛は余命が比較的あるうちから出現するために、あまり予後判断の参考とならない)。例えば全身倦怠感や食欲不振などが出現する。ただしこれらの苦痛症状がステロイドに反応して、ある程度軽減される。また化学療法施行中はその副作用で全身倦怠感や食欲不振などが認められることもあるので、その影響を除いて判定する。
・ADL(日常の立ち居振る舞い)が多少なりとも障害され始める。
・気力の枯渇等から外出が減り、家の中での生活がメインとなる。寝て過ごす時間が多くなる。
・一般的には、「やりたいことを何とかやれる」のはこの時期。例えば最後の旅行など。もう一段階状態が悪化した週単位ではやるべきことをやろうとしても一般に困難になる。在宅移行・転院・一時退院にふさわしい時期。

② 余命短い週単位(余命1~3週間以内)

・疼痛以外の苦痛症状の増悪が認められる。特に全身倦怠感が強くなる。これらの苦痛症状がステロイド投与でも、あまり改善しなくなる。
・ADLの障害が目立ってくる。トイレ歩行も困難になってくる。
・ベッドで臥床している時間が多くを占めるようになる。
・声帯のやせからの嗄声や、耳管の調節機能の低下による耳の異和感や異音の聴取、体力低下に続発する視力低下(ぼやける・かすむなどの表現を取る)などが出現する。
・見当識障害も程度差があるが出現し始める。せん妄・混乱に至る患者も存在する。
・一般的には、「最低限ならば、やり残したことをやれる」限界のライン。外出泊が何とかできる程度。在宅移行・転院・一時退院ができないわけではないが、ぎりぎりの時期。

③ 余命日単位(余命数日以内)

・苦痛症状が一番強くなる。特に全身倦怠感が強くなり★1、身の置き所のないような表現を取ることが多い。また痛いと訴えるが局在がはっきりとせず、身の置き所のなさが「痛い」という表現を取っていることがしばしば認められる。これらの苦痛症状はステロイド投与でも、緩和されない。余命24時間前付近が、苦痛が最大となる時間帯であり、鎮静(最低限間欠的なものでも)を考慮すべき時間帯である。せわしなく体を動かされたり、足が重だるく感じて看護者が動かすのを希望されたりというような表現も目立つ。
・ADLの障害は顕著である。ベッド上から動くことは難しく、また動けないのにトイレへ行こうとして苦しまれることもある。
・表情は一般的に苦悶状。眉間にしわが寄っている。
・寝ているか、あるいは身の置き所のなさ・全身倦怠感で苦しまれるか、というどちらかの状態。
・意思の疎通は通常困難となってくる。せん妄・混乱の頻度も高くなる。
・急変も起こりやすいので、看取りに居合わせたい家族はなるべくそばにいたほうが良い。

④ 余命時間単位(余命1日以内。ほぼ数時間程度。一般の表現で“時間の問題”)

・意識レベルが低下し、苦痛症状を訴えなくなる。
・体動が消失する。
・苦悶状の表情がなくなる。眉間からしわの消失。
・声漏れ(強い息に伴うアーアーの間欠的発声)が出る。これは辛さのためではない。家族に伝える必要がある。
・死前喘鳴(咽頭部のゴロゴロ音)が聴取される。これも意識が低下していれば、苦しくはない。
・橈骨動脈や上腕動脈を触知しなくなる。
・尿の流出が止まる。あるいは、相当低下する。
・看取りに居合わせたい家族はそばにいたほうが良い。
・呼吸は一般的に浅く速いである。呼吸が下顎呼吸となり、1分あたりの呼吸回数が数回程度となれば、分単位である。

※これらの時期は、終末期医療に習熟した複数の医療者で、また緩和ケアチームとの相談で、目安をつけるのが望ましい。

★1 最近の考え方では、身の置き所のなさ=倦怠感、とするよりも、高頻度のせん妄により身の置き所のなさが生じていると解することが多い。

なお、リンクは次です。→がん終末期予後判断指針(大津版)

 

最後の症状と最期の様子と家族のすること

ひと口に終末期といっても、余命が月単位ある時と、週単位の時と、日単位、時間単位の時とでは、見た目の状況やよく出る症状は異なります。

多くの場合、余命が日にちの単位となると、せん妄の状態になります

よく間違えられるのですが、意識が比較的清明に見えても、実際はせん妄状態に陥っていることは非常に多いです。

清明な時間があるからと言って、せん妄は否定できません

むしろ日内変動があることが、せん妄の診断基準(DSM-5)には入っているくらいなのです。

せん妄も比較的穏やかなものもあれば、非常に興奮を伴い、ご本人にもご家族にも苦痛になる場合があります。

興奮が強いケースでは、暴言のようなことをおっしゃる場合もありますが、それは本意ではないので、ご家族は気をつける必要があります

そしてそのような事例では、医療者にそれを緩和する処置を希望すると良いでしょう。

抗精神病薬もある程度有効ですが、終末期のせん妄はしばしば治療抵抗性で、「鎮静」という処置が必要になることも多いです。

 

鎮静は安楽死ではなく、命も縮めない

このホームページでも度々説明していますが、鎮静は安楽死ではなく、命も縮めません。

ただし、鎮静薬を用いて意識を低下させることによって苦痛を緩和するので、コミュニケーションが難しくなります。

この鎮静に使う薬はモルヒネではなく、胃カメラを眠って行う際に使うのと同じ、ミダゾラム(商品名ドルミカム)という薬剤です。

またそもそもとして、この鎮静を考慮する際は、せん妄状態であることも多く、これらの薬剤を使わなかったからと言って最後までしっかりコミュニケーションを図れるわけでもありません

鎮静薬を使わない→意識清明、鎮静薬を使う→一切のコミュニケーション不可、と0と1で色分けできるものでもないのです。

そして鎮静薬を用いなくても、最後の数時間は意識が低下することがほとんどです。

その前までは、一般に、苦しそうな状況が続きますので、必要十分な鎮静が考慮されます。

 

それなので鎮静が検討される前段階で十分なコミュニケーションを図ること

鎮静が検討される時期はそもそも前臨死期といえ、コミュニケーションは(鎮静を行わなくても)不安定になります

それなので、その前段階で十分話し合うべきことは話しておくことです。

せん妄が強い時期は、周囲は穏やかな対応を心がけてください。

罹患者の言動に必要以上に惑わされる必要はなく、穏やかに見守りましょう。

せん妄からの混乱や興奮が強ければ、医療者に対応を求めましょう。

せん妄をせん妄と取らないと、間違った治療(医療用麻薬の過大な増量の元となるので、ある程度以上の緩和ケアの知識が医療者にも必要であり、またご家族の理解も重要となります(痛そう=痛みとは限らないので、鎮痛薬を求め鎮静薬を厭うというのは不合理な可能性があります)。

まだまだ終末期の真実はあまりにも知られていません。

ぜひ困っている方には、これらを知って頂く、あるいはこの情報をご紹介頂ければと思います。

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About 大津 秀一

緩和医療専門医/緩和クリエーター。数千人の患者さんの緩和ケア、終末期医療に携わり、症状緩和のエキスパートとして活動している。著書や講演活動で、一般に向けて緩和ケアや終末期ケアについてわかりやすくお伝えすることをライフワークとしている。