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※コメント 最近は末期ではなく人生の最終段階と呼ばれることも増えていますが、一般に使用されている言葉の状況を鑑み、本稿では「末期」と記します。また、終末期の話題なので、現在体の調子が優れない方は、無理して読まれないほうが良いでしょう。

 

末期がんに”早期”緩和ケアとは?

末期がんの方に早期緩和ケア。

何を言っているのだ? と思う方もいるでしょう。

ただしかし、末期がん、と言っても、時期的に絶対的な基準があるわけではありません。

一般には、すでに有効な治療がなく、余命もあまり長くないと「推測される」場合が当てはまりますが、

その長さは予測と裏腹に変化をすることもあります。

たいていは、次第に様々な症状が増えてきますし、生活動作も障害されてきます。

できるだけ苦痛な症状を抑えたほうが良いのは確かです。

それなので、末期の中でも、可能な限り早期に、緩和ケアの担い手の関与を受けるに越したことはありません。

治療病院でも、緩和ケアチームや外来などがありますから、有効活用すべきです。

 

末期ガン最後の症状とは?

アメブロでも継続的に記しているように、実は余命が数日となった際に、痛みよりもしばしば問題になる症状があります。

余命1ヶ月ほどだと、見た目には元気なようにすら見える場合があります。しかし余命が短い週単位~日単位となって来ると高い頻度で起こる症状があるのです。

それはせん妄です。

せん妄とは、重篤な身体状態を背景に、薬剤など多様な因子が引き金となって、意識の変容や意識障害を起こし、患者さんによっては混乱や興奮をきたす病態です。

手術後にも起こることが知られていますが、末期がんの状態においては「極めてよく」認められるものです。

余命数日となる以前のような、末期中の末期ではない状態ならば、昼夜のリズムを薬剤で付けたり、抗精神病薬など混乱や興奮を抑える薬剤を用いることで改善の余地はありますが、亡くなる前の時期になると、そもそも全身状態の不良さや様々な臓器の障害など、せん妄を起こす要因は多様に存在していることが通常です。

それなので、もとのはっきりとした意識状態に戻すことはほとんどの場合困難となります。

 

最後に必要なのはモルヒネではなく鎮静剤 痛いと言っても純粋な痛みとは限らず

意識が障害され、あるいは意識変容・混濁が起こると、患者さんはつじつまが合わないことを仰ることが増えたり、眠っているように見える時間が増えたりします。

うわ言のように痛い痛いと仰ることもありますが、痛みの部位などを訴えることができず、ひたすら痛いと繰り返しているような場合は、純粋な痛み、というよりは、意識混濁に伴う症状でうなされていることに近い、とも考えられます。

実際、余命数日の身の置き所がないように見える苦しみに関しては、モルヒネなどに代表される医療用麻薬の効果は薄いのです。

そのような場合は、意識の水準をより落とし、眠っているようにすることで苦痛緩和をする「鎮静」という医療処置を行います。

死に至らしめて苦痛緩和する手段ではないため、安楽死ではありません。

また多くは余命数日に施行を検討するものであり、無理やり眠らせるわけではありません。

特に余命数日は、そのようなせん妄からの苦しみが強く、それが医療用麻薬も含めた薬剤で緩和できないことが多いため、鎮静薬(例えばミダゾラムなど)が使用検討されるのです。

 

見守る側はどうしたら良い?

多くの方にとって、亡くなってゆく方をみる機会はあまり多くないでしょう。

それなので、わからないのが当然で、動揺なさったり不安になったり、気持ちが上下するのは「当たり前」で、医療者はそのことをよくわかっています。

特に、がんの終末期は経過が急に見えることが多く、前回の来訪時とまるで状態が変わって見える…ということもむしろ当たり前のようにあるものですし、

特に薬剤を使っていなくても、意識の変容や混濁は(全身状態を背景に)起きてくるものです。

よく医療者とコミュニケーションを図って疑問点を氷解させ、またご家族間でもよく話し合って、一人ひとりにご無理がないようにローテーションを組むなどして傍にいらっしゃることが良いと思います。

たとえフルに緩和ケアの技術を駆使したとしても、最後の数日はゆく方も見守る方も大変な時期であることも多いでしょう。

それでもできることは何かしら必ずあります。誰もがいつかは迎える瞬間ではありますが、それができるだけ穏やかに、そして望んだものでありますように、それを強く願う次第です。

早期からの緩和ケア外来相談 緩和ケア医(緩和医療専門医)大津秀一

★早期緩和ケア相談所での外来・相談についてはこちらから

 

 

 

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About 大津 秀一

緩和医療専門医/緩和クリエーター。数千人の患者さんの緩和ケア、終末期医療に携わり、症状緩和のエキスパートとして活動している。著書や講演活動で、一般に向けて緩和ケアや終末期ケアについてわかりやすくお伝えすることをライフワークとしている。