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腎がんの緩和ケア

腎がん、腎臓がんは、実は2種類あります。

1つは腎細胞癌で、腎の実質にできたものです。

もう1つは腎盂癌で、これは腎盂にできます。

両者は成り立ちが違うため区別され、治療も異なります。

基本的には高齢になると増える腫瘍で、男性のほうが2倍以上多いです(なりやすい)。

どのがんもそうですが、高齢者が多いがんとはいえ、若年者でもなることがあります。

印象が強いためなのかもしれませんが、30代や40代の患者さんを比較的診てきた腫瘍です(私のあくまで経験上)。

腎臓の場所は、お腹というより背中です。

正確に言うと、腹膜と背中の間にある後腹膜腔(こうふくまくくう)という場所に位置しています。

初期症状は乏しいですが、進行すると諸症状が出現してきます。

腎細胞がんの緩和ケアについてお伝えします。

 

腎細胞がんの体の苦痛症状と緩和ケア

腎細胞がんと痛み

腎細胞がんは初期には痛みはないですが、増大に伴い痛みが出現することがあります。

位置の特性から、背中の右側か左側に出ることが多いです(中央ではない)。

腹痛を訴えるケースは少ないです(ないわけではない)。私が知るあるケースでは、腎細胞がんが巨大化し、大腸を圧迫して痛み(蠕動痛<ぜんどうつう>腸が強く動くことで出る痛み)が出ていたケースもありました。ただしこれは多数派ではありません。

痛みは鈍痛が多いです。

痛みの形式としては、内臓痛というものに分類されます。

内臓痛は医療用麻薬が良く効きますので、適切に医療用麻薬治療で緩和すべきです。

腎細胞がん自体の痛みよりも、好発する転移先の痛みが問題になることが多いです。

それは骨転移痛です。

骨転移の痛みは内臓痛のような鈍痛ではなく、明確に痛み、時に激しく疼痛が自覚されます。

腎細胞がんの場合は全身に骨転移が生じることがありますから、そのような場合の苦痛の強さは患者さんにとって相当つらいものです。

治療としては、まず医療用麻薬を適切に使用することは必要不可欠です。

①必要な量まで必ず基本量(ベース量)を増やすこと

②痛い時の追加投与(レスキュー。頓服薬)を適量に調節すること

他に、NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)が使用可能な状況(腎機能障害がなく、消化性潰瘍もない)ならば、医療用麻薬とNSAIDsを併用することが大切です。

ロキソニン(一般名;ロキソプロフェン)やボルタレンSR(一般名;ジクロフェナク)などを医療用麻薬に足して使用します。

他にも、ビスフォスフォネート製剤やデノスマブという骨を吸収する細胞の働きを抑える薬剤を用いたりもします。

症状緩和目的の放射線治療を行うことも重要です。

患者さんは痛みに対して薬剤が複数になり、他にも様々な治療が加わる場合もありますから、ご心配になることもありますが、手強い骨転移の痛みを緩和するにはそれくらい複合的な手段を組み合わせる必要があるということを説明して、安心して頂きます。

 

腎細胞がんと痛み以外

他のがんと同じように、腎細胞がんもしばしば重要臓器への転移が認められます。

肺や脳への転移がしばしば起こります。

肺に転移が起こり、呼吸困難を起こした場合は、酸素投与を行ったり(これは在宅でもできます)、医療用麻薬を処方したりします。

医療用麻薬は息苦しさに効きます。ただし、向いているケースとそうではないケースがあるので、緩和ケアの担当者による判断も必要です。

脳に転移すると、麻痺症状やけいれんなどが起きたりする場合もあります。

ステロイドを用いたり、放射線治療等で脳の転移した腫瘍の対処を行います。

また腎細胞がんは、炎症を招来する物質を出しやすい腫瘍であることが知られ、発熱やだるさなどの全身症状を来たすことが相対的に多いです。

このように比較的、転移や全身症状をしばしば見かけるがん種であり、それぞれに対してできることを行っていきます。

 

腎細胞がんと心理的な問題、治療に関する問題

腎細胞がんは原病巣たる腎臓がんを摘除することが好影響をもたらすので、stageⅣであっても手術の適応が生じますし、それ以下のstageではもちろん治療法になります。

遠隔転移があっても腎摘除術の適応となるのです。

また他の腫瘍とは異なり、抗がん剤治療や放射線治療の効果があまりないことが知られてきましたが、現在は分子標的薬が適応となり効果を示しています。

分子標的薬も様々な副作用をもたらしますから、治療の副作用への対策も大切になります。これは主として、治療医が対応することになるでしょうから、ご自身の症状をしっかりはっきり伝えることが重要になります。

腎臓がんも先述したように、比較的若い世代も罹患することがあります。

幅広い年代で起こるがゆえに、その年齢における環境を理解し、治療とケアを行っていきます。

一概に言えませんが、経過が長いこともしばしばあり、つつがなく生活できるように食事や運動等の助言や、気持ちの状態をよく保てるように支援を行うことも大切になるでしょう。

腎細胞がんが全身症状からのだるさや食欲不振も比較的起こしやすいとも言えるので、生活上のアドバイスは特に重要になっており、それらに配慮して緩和ケアが行われます。

 

まとめ

腎細胞がんも他のがん種と同様に、様々な苦痛症状を起こします。

痛みはもちろんですが、それ以外の症状にもしっかりとした対処が必要です。

症状に関しては、全身症状や転移がしばしばあるため、総合的に対処することが重要となります。

基本的には高齢の方に多い腫瘍ですが、30代や40代でなる方もおられ、社会的な支援を厚くすることが大切です。

他のがん種と同様に困ったら遠慮なく医療者に相談しましょう。それが第一歩です。

早期からの緩和ケア外来相談 緩和ケア医(緩和医療専門医)大津秀一

★早期緩和ケア相談所での外来・相談についてはこちらから

 

 

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About 大津 秀一

緩和医療専門医/緩和クリエーター。数千人の患者さんの緩和ケア、終末期医療に携わり、症状緩和のエキスパートとして活動している。著書や講演活動で、一般に向けて緩和ケアや終末期ケアについてわかりやすくお伝えすることをライフワークとしている。