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胆管がんの緩和ケア

2017年のがん統計予測

によると、胆管がんは胆嚢がんとまとめられています。

罹患数は全がんの10位内に入っていませんが、死亡数は10位内に入っています。

胆管がんは胆管の上皮(胆管内側の表面をおおう粘膜)から発生します。

発生した部位により、肝外胆管がんと肝内胆管がんに分けられます。

肝内胆管がんは胆管細胞がんと呼ばれることもあり、さらに肝内胆管がん(胆管細胞がん)は肝臓にできたがんとして、肝細胞がんと一緒に原発性肝がんとして取り扱われている……というやや、ややこしい感じですね。

参考;胆管がん 

胆管が閉塞しての黄疸(おうだん)は有名な症状です。

胆汁が腸内に流れてこなくなるので白色便になったり、血液中のビリルビン濃度が高くなるので尿の色が茶色っぽくなります。

胆管がんは手術も高度な技術を必要とし、術後の再発も少なくありません(胆道がん/がん研有明病院)。

また、抗がん剤治療も使用できる薬剤が限られ、生存率も良くはありません(同上)。

胆嚢は場所が肝臓や胆管に近いため、進行するとそれらの臓器に容易に進展します。

膵胆管合流異常症があるケースは胆管がんのハイリスク群です。

日本人は膵胆管合流異常症の頻度が相対的に高く、同病態は先天性のため、他の原因による場合よりも若い年齢で発症することがあります。

厳しい病気であるためこのがんで倒れる方も少なくなく、有名人の中でも川島なお美さん、任天堂・岩田聡さん、柔道家斉藤仁さんはいずれも50代半ばで胆管がんでお亡くなりになっています。

胆管がんの苦痛・つらい症状と緩和ケアについて解説します。

 

胆管がんの体の苦痛症状と緩和ケア

胆管がんと痛み

胆管がんで痛みはよくある症状であり、30~50%の患者さんに認めるとされています。

右上腹部痛やみぞおちの痛み、背中の痛みなどが出現します。

痛みは、必ずしも高度というわけではありません。鈍痛が多いです。

激痛が多い、胆石疝痛(たんせきせんつう)や胆嚢炎の痛みとは異なることが指摘されています。

痛みの形式としては、内臓痛というものに分類されます。

痛みには不快感や重い感じ、気持ち悪さを伴うことがあります。

一方で、痛みとして捉えられていないこともあり、そのような場合は治療が遅れることもあります。

みぞおちが痛むこともよくあり、胃痛などと捉えられてしまっていることもしばしばあります。

内臓痛は医療用麻薬が良く効きます

また胆管がんに対して抗がん剤治療などを開始しても、抗がん剤が効いて腫瘍が制御されて痛みが緩和されるまでは一般にある程度時間がかかります。

その間、いたずらに苦痛に耐える必要は全くありません

痛みは情動などにも悪影響を与えます。内臓痛は適切に医療用麻薬治療で緩和すべきです。

もちろん医療用麻薬以外の鎮痛薬も状況に応じて使用したり、併用したりします。

痛みの具合は人それぞれなので、その方に合った鎮痛療法を行っていきます。

 

胆管がんと痛み以外

食欲不振や嘔気・嘔吐などは他のがんと同様に出現します。

胆道閉塞が起き、閉塞性黄疸(おうだん)を起こし、胆管炎になることもあります。

胆道系の閉塞にはドレナージやステント治療が施行されます。

文献的裏付けには乏しいですが、経験として、腫瘍周囲浮腫軽減からの圧迫減少からか、ステロイド使用にてビリルビン値の上昇が止まる場合や低下する場合もあります。他の手段が無効ならば検討されるかもしれません。

肝門脈へ浸潤し、十二指腸閉塞を来たすこともあります。

十二指腸閉塞は嘔気だけではなく嘔吐を繰り返すようになりますから、念頭において早期対処することが重要です。ステント治療等が適応になります。

柔道家の故・斉藤仁さんは癌性胸膜炎が死の原因となったと報じられました。進展した場所に応じて様々な苦痛症状を起こす可能性があります。

 

胆管がんと心理的な問題、治療に関する問題

胆管がんは一般に手強い病気です。

ただ特に胆管がんだけが予後が厳しいわけではなく、難治性の膵臓がんや肝臓がんもそうです。

これらをまとめて、肝胆膵(かんたんすい)領域と呼びます。

肝胆膵領域に厳しいがんが多いのは

●主要な血管が多いこと

●臓器が漿膜(しょうまく)とよばれる膜につつまれていないため、早期にリンパ管などに転移してしまう

●(胆管がんでは)有効な抗がん剤の開発が遅れているということ

●手術を行っても再発してしまう方が多いということ。

参考;胆管がんの原因と生存率-なぜ生存率が低いのか

など複数の要因が併せて存在することに依るとされています。

数の上での生存率等のデータは良いとは言い難いです。

進行すると痛み以外にも狭窄症状・閉塞症状を来たし、その身体的なつらさや、繰り返し内視鏡等の処置が必要になることなども、心理的な負担に関係するでしょう。

がんの原因の1つとなる膵胆管合流異常症を持っている方の場合は、それが先天性のものであるため、相対的に若く発症する場合もあり、年代に応じた心理・社会的な支援も重要となります。20代の患者さんもおられます。

また大阪市の印刷会社の元従業員の方に多発したこともあり、特定の化学薬品のがんとの関連も考えられています。

病期に応じて、手術や化学療法が行われます。治療による合併症や副作用も問題となりますので、その点にも十分な配慮とケアが大切です。

 

まとめ

胆管がんも他のがん種と同様に、様々な苦痛症状を起こします。

痛みはもちろんですが、それ以外の症状にもしっかりとした対処が必要です。

胆管がんでは胆管閉塞が出現してきます。また上部消化管狭窄・閉塞などの多様な症状が出現して来る可能性があり、早期対応することが重要です。

胆管がんも、他の腫瘍と比較すると、やや離れた場所への遠隔転移よりも直接的な周囲臓器への浸潤、転移が問題となる特性から、緩和ケアへの依頼が少ない傾向があるかもしれません。しかし、問題は心理・社会的なものなど様々にありますから、総合的な支援のために緩和ケアを活用するのが良いと考えられます。

進行例では厳しい腫瘍となるため、総力的な対応が必要になり、緩和ケアもその大切な一部と言えるでしょう。

早期からの緩和ケア外来相談 緩和ケア医(緩和医療専門医)大津秀一

★早期緩和ケア相談所での外来・相談についてはこちらから

 

 

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About 大津 秀一

緩和医療専門医/緩和クリエーター。数千人の患者さんの緩和ケア、終末期医療に携わり、症状緩和のエキスパートとして活動している。著書や講演活動で、一般に向けて緩和ケアや終末期ケアについてわかりやすくお伝えすることをライフワークとしている。