腎盂がんの緩和ケア
腎がん、腎臓がんは、実は2種類あると、腎細胞がんの緩和ケアの項で説明しました。
1つは腎細胞癌で、腎の実質にできたものです。
もう1つは腎盂癌で、これは腎盂にできます。
両者は成り立ちが違うため区別され、治療も異なります。
腎という名前が付いていますが、性質は同じ尿路上皮にできる膀胱がんに類似しています。ただし膀胱がんより頻度は少なく1/10程度となります。
喫煙との関連が指摘されています。
腎盂がんの90%以上を占める移行上皮がんは、 尿路に同時に多発したり、後で再発したりという特徴があります。
腎盂がんの治療後には30~40%程度、 膀胱がんの発生がみられるとも言われています。
腎盂がんの緩和ケアについてお伝えします。
腎盂がんの体の苦痛症状と緩和ケア
腎盂がんは初期には痛みはないですが、進行に伴い痛みが出現することがあります。
血の塊や腫瘍が尿管を閉塞させ、腰背部痛や側腹部痛を起こします。
医療用麻薬などが緩和に使用されます。
腎盂がんの場合は、膀胱の症状を(膀胱がんが併発していなければ)欠くので、血尿だけが症状ということも稀ではありません。
痛みは20~40%に見られるのに対し、血尿は7~8割に出現し、その一方で膀胱等の症状は10%にも満たないとされます。
はっきりとした症状を欠くためにしばしば進行し、診断時に10~20%程度はリンパ節、肺、肝臓、骨などに転移しているという指摘もあり、転移場所によって様々な痛みを発症します。
肝臓への転移は内臓痛、骨への転移は体性痛を起こし、それぞれ対処が必要になります。
腎盂がんと心理的な問題、治療に関する問題
腎盂がんは、膀胱がんでの再発のリスクがあるため、心理的なストレスがかかります。
また腎盂がんは、一般に高齢の方、特に男性が多いがんですから、その身体・心理的な配慮も忘れてはなりません。
また腎盂がんは膀胱がんと同様に、特定の化学物質を扱う職業者に発症するリスクがあり、そのようなケースでは比較的若年で発症することもありますので、その際はご高齢の方と異なった社会的な配慮が必要になります。
その年齢における環境を理解し、治療とケアを行っていきます。
進行した腎盂がんは抗がん剤治療が行われます。
その際は抗がん剤の副作用対策も重要となり、基本的には治療医が対応しますが、緩和ケア医も適宜支援を行います。
膀胱がんや腎盂がん、尿管がんなどの尿路上皮に起こるがん(尿路上皮がん)で抗がん剤治療を行っても抵抗性のケースに、2017年より免疫チェックポイント阻害剤のペムブロリズマブ(商品名キイトルーダ)が承認されています。同薬も固有の副作用を起こしますので、注意して継続診療することになるでしょう。
まとめ
腎盂がんも他のがん種と同様に、様々な苦痛症状を起こします。
痛みはもちろんですが、それ以外の症状にもしっかりとした対処が必要です。
症状に関しては、全身症状や転移がしばしばあるため、総合的に対処することが重要となります。
基本的には高齢の方に多い腫瘍ですが、30代や40代でなる方もおられ、社会的な支援を厚くすることが大切です。
頻度が少ないがんで、情報を得にくかったり、同病の方とあまり情報交換できなかったりする点も、患者さんにとっては大変かもしれません。
他のがん種と同様に困ったら遠慮なく医療者に相談するのが良いと考えます。