子宮がん(子宮頸がん、子宮体がん)の緩和ケア
によると、全子宮がんは罹患数が全体のトップ10には入っていません。
罹患数は子宮頸がんと子宮体がんを併せても、全体の11位です。
死亡数は全体の15位ですが、女性のがん死では第8位になります。
絶対数としては、有名ながんにもかかわらず、少ないような気がしますが、罹患数で言うと、女性では第5位に入っています。
他にも大きな問題があります。
それは比較的若い世代でもなる、ということです。
そのため、仕事や子育てなどの社会生活が妨げられる可能性があります。
子宮は骨盤内に位置しています。
したがって、骨盤内の腫瘍として良くある症状群を発症します。
子宮がんの緩和ケアについてお伝えします。
子宮がんの体の苦痛症状と緩和ケア
子宮がんと痛み
子宮がん自体は、当初痛みがないか、鈍痛を下腹部に自覚したりなどがあります。
痛みの形式としては、内臓痛というものに分類されます。
内臓痛は医療用麻薬が良く効きますので、適切に医療用麻薬治療で緩和すべきです。
初・進行前期の子宮がんの痛みと打って変わって、高度進行期や末期の子宮がんの痛みは、時に治療に難渋し、医療用麻薬を用いても痛みが続くことがしばしばあります。
子宮の周囲も、骨盤神経叢(こつばんしんけいそう、と読む。神経叢とは神経が集まって網目状になっている部分)などが存在し、進行期には容易に神経障害性疼痛を併発します。
神経障害性疼痛は医療用麻薬だけでは緩和が難しいことがある痛みです。
難治性の神経障害性疼痛の場合は、医療用麻薬の他に、鎮痛補助薬という痛み以外の主適応症を有しているが痛みへの効果もある薬剤群を併用したり(例えば商品名リリカや商品名サインバルタなどが有名です)、神経ブロックを専門家にお願いしたりします。
子宮頸がんのほうが、子宮体がんよりも下方にあるため、骨盤神経叢浸潤からの高度の神経障害性疼痛を起こしやすいです。
直腸がんなどの骨盤の下方に出現する腫瘍と同様に、時に難治性神経障害性疼痛を起こす病気が、子宮頸がんです。
子宮がんと痛み以外
子宮がんも転移を来しますので、転移した場所により様々な症状を来します。
子宮は、膀胱や直腸とも近いです。
中には、腫瘍が膀胱や直腸に浸潤し、穴(瘻孔。ろうこう、と呼びます)を形成することもあり、厳しい症状をもたらすこともあります。
また、子宮がんは、リンパ浮腫を起こしやすいがんです。浮腫はふしゅと呼び、むくみです。下肢のむくみが出ます。
手術後にも出現しえますが、病気の進行によっても出現します。
リンパ浮腫は単なるマッサージや漫然とした利尿剤の治療が適していません。
リンパドレナージという特別な手技が必要になります。
リンパ浮腫の治療は専門家の関与が重要です。
子宮がんと心理的な問題、治療に関する問題
子宮がんは頸がんと体がんで、好発する年齢が異なります。
特に子宮頸がんが起こる年代層は、仕事や子育てなど、様々な役割をこなしながら、社会的な生活を送り、また人生におけるタスクを成し遂げてゆく時期です。
乳がんの発症のピークは40歳台後半から50歳台前半ですが、子宮頸がんは30歳台後半がピークと、罹患が多い年齢が10歳ほど若いです。晩婚化している現在において、この年代は小さなお子さんがいて手がかかっているケースもあり、家庭生活を直撃しえるものであり、また仕事でも大切な役割を担っている年頃ですから、与える社会的な衝撃は少なくないものがあります。
また、がん治療によって起こる性に関する問題も、子宮がんの場合は見逃せない問題です【参考;がん患者の<幸せな性>春秋社】。
さらに、挙児希望がある場合の治療も諸配慮が必要で、専門家が対応してくれるでしょう。ただ中には挙児希望があっても、お子さんを諦めなければならないケースもあり、心理的なストレスは甚大となりえます。
治療に関しても手術後に抗がん剤治療や抗がん剤治療+放射線治療<同時化学放射線療法(concurrent chemoradiotherapy;CCRT)>が追加になるケースがあり、治療の副作用への対策も大切になります。これは主として、治療医が対応することになるでしょうから、ご自身の症状をしっかりはっきり伝えることが大切になります。
まとめ
子宮がんも他のがん種と同様に、様々な苦痛症状を起こします。
痛みはもちろんですが、それ以外の症状にもしっかりとした対処が必要です。
性の機能に関係する部位の腫瘍であり、ライフスタイルに大きな影響を及ぼす可能性があります。
発症年代が相対的に若く、社会生活を直撃することも見逃せません。
相当病気が進行した場合は、まだ幼少かもしれないお子さんに病気をどのように伝えるか等も問題になります。私の経験でも、支援したケースはほとんど子宮がんや卵巣がん、乳がんなどの女性の高度進行腫瘍例でした。
婦人科も大変多忙な科で、時間をかけてじっくりと悩みに向き合うのは、なかなか困難であることも現実でしょう。
緩和的な諸問題に詳しい専門家を併用する価値があるがん種の一つとも言えますでしょう。