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変わらぬ誤解 最後は痛い

がんの最後の最後は「痛くて苦しむ」そう思っていらっしゃる方がいたら、そうではないことを知っておくのが良いでしょう。

私はこれまで2000人以上の方を看取ってきました。

それなので、痛みが最後の最後の問題としては相対的にそれほどでもないことを知っています。

しかし一度社会に広まった認識はあまり薄まりません。

いまだに、末期は痛い、という誤解があります。

確かに、「痛いか?」と問うと、うなずかれるだけの患者さんもいます。

それをご覧になれば、「痛いのだろう」と感じて当然です。

しかしそう簡単に捉えることができないのが、末期の難しさです。

 

人の死の理想と現実

私が医師になって衝撃を受けたこと。それは、人は最後意識が低下して、最期の瞬間まで言葉を交わせる人はいない、という現実でした。

その後、緩和ケアの専門家となり、先述したように数多くの方の最後に立ち会って来ましたが、変わらないこの真実を痛感しています。

癌の場合、最後の経過は、多くの一般の方が思うよりも急です。あっという間に、という形容詞が当てはまるくらいです。それなので、「1週間ぶりに来てみたら全く状態が違う」ということが頻繁にあります。むしろそれが当たり前なのです。

急に意識が低下していると、患者さんのご家族は驚きます。その時に、「そういえばこの間まで痛がっていたな……先生は痛み止めを始めるって言っていたな」と思い出すと、ピンと来たりします。

もしかして薬で眠らされてしまっているのではないか」と。

驚かれることがしばしばありますが、実は末期になると、特に眠くなる薬剤を使わなくても、患者さんは次第に意識が低下してきます。健康な人でも重い風邪やインフルエンザになると、身体は休息を欲し、寝る時間が増えると思います。それと同様に、末期の衰弱はうとうとと眠っている時間を増やすことになります。身体の状態は脳にも影響を与え、意識もそうなのです。

最後に意識が低下してきて眠っている状況が続けば患者さんにとっては楽なのですが、必ずしもそうなるとは限りません。亡くなる数日は、「身の置き所がない」と形容されるような、せん妄や倦怠感(だるさ)などで患者さんはしばしば難儀されます。覚醒していてもつらい、そういう状態に、病気のせいでなってしまうことは、けして珍しくはないのです。

理想は、最後まで意識がはっきりしていて、言葉を交わせることです。しかし現実にはそれは叶いません。

私も医師になって、そのことに衝撃を受けました。幸いにして人の死をほとんど見ないで医師になった私は、まるでテレビの死のようなものが現実であると漠然と思ってしまっていたのです。ただ、最後まで言葉を交わしたい、そのような私たちの希求とは裏腹に、現実はそうなっていない、それを知っておいたほうがいざという時に適切に動けるのではないかと思いますし、事後の後悔も少なくなるのではないかと思います。

また、それを知っていれば、もっと元気な時に、より大切なやり取りができるでしょうしね。

 

見守る家族もつらい しかも「モルヒネは効かない」

全身状態の不良さが、脳に影響し、最後の数日は意識が低下し、混濁します。時には混乱や興奮を伴うせん妄になることも、しばしばあることです。また、目立った興奮や異常な言動がなくても、専門家の観察からは意識混濁があってせん妄と判断されることは珍しくありません。亡くなる方の約9割に及ぶという報告(Occurrence, causes, and outcome of delirium in patients with advanced cancer: a prospective study. Lawlor PG, et al. Arch Intern Med. 2000, 160(6):786-94.)もあります。実は一般の方や医療者が認識しているよりもかなり多いのです。

混乱や興奮を伴うせん妄になると、見ている側は苦痛を伴います。しかしこの時に、「先生、モルヒネで眠らせてあげてください」と要請されるご家族もいらっしゃいますが、それはあまり妥当ではありません。

このような状態のときは、せん妄状態です。モルヒネなどの医療用麻薬は、世間では”眠らせる”薬のように思われていますが、実は意識の低下をもたらす作用はそれほど強くありません。また、せん妄に対しては悪影響になる可能性があります。昔の、最後の身の置き所がない状態を「痛みから」と捉えて、余計にせん妄を強めるかもしれない医療用麻薬をどんどん増やしていった医療は、今は過去のものとなっています。

理想は、最後まで起きてコミュニケーションが図れることです。しかし現実は、最後の数日は起きていても患者さんは相当つらい、ということが稀ならずあります。それなので苦痛緩和のために、鎮静薬(モルヒネなどの医療用麻薬ではない種類の薬剤)を用いて緩和するしかない、という状況になり得ます。

このような状況下では、モルヒネは必ずしも妥当ではないのです。ただ、明確な痛みがある時は使ったほうが良い場合もあってケース・バイ・ケースなので担当の医師とよく相談することが大切でしょう。

身の置き所がない様態の患者さんを見ているご家族は、一般につらいです。特に混乱や興奮が強い場合はそうで、しばしばインターネットで体験談を拝読すると、そのつらさが伝わって来ます。ただひとつ重要なこととして、末期癌で上のような症状が出た際は、残り時間はもう極めて限られている、ということです。

つまり、大切な人との別れが差し迫っています。

確かに、苦しむ家族を前に、何もできない、いても意味がない、いてもつらいだけ、そのような気持ちはよくわかります。

けれども、医療者の私たちは感じています。そしてこう話し合います。

「ご家族がいるときは少し楽そうですね」

「ほんとですね」

そう、やはりせん妄によって、時間や場所、人の感覚が障害されてしまっている状況ではあっても、切り離されそうになるつながりを引き留めるよすがとして、ご家族がいらっしゃるということはとても重要だと思うのです。

 

まとめ

最後の症状は痛みよりも、せん妄や身の置き所のなさが問題になります。

苦痛緩和のための鎮静については最低限知っておかれるのが良いでしょう。

苦痛緩和のための鎮静を知ることでつらい最期を回避

問題は、鎮静をしようとしまいと、意思表示が困難になることです。

痛みよりもその点が問題になることが多く、事前の行動および意思表示と共有が大切になるでしょう。

がんになっても、なっていなくても1分でも長生きする方法を本にしました。

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About 大津 秀一

緩和医療専門医/緩和クリエーター。数千人の患者さんの緩和ケア、終末期医療に携わり、症状緩和のエキスパートとして活動している。著書や講演活動で、一般に向けて緩和ケアや終末期ケアについてわかりやすくお伝えすることをライフワークとしている。