目次
緩和ケアを受けたい。ではどこで受けられますか?
緩和ケアを受けたい。
皆さんがもしかするとそのように思う機会があるかもしれません。
あるいは皆さんの大切な方が、苦痛を和らげてほしいと希望される時があるかもしれません。
では、その緩和ケア、一体どこで受けられるでしょうか?
一般病院・大学病院・ホスピス・在宅で勤務歴のある緩和ケア医(緩和医療専門医)の私が、それを皆さんにお伝えしようと思います。
① 緩和ケア病棟・ホスピス 早期緩和ケア度(-)<入院の場合。ただし施設による>
緩和ケア病棟やホスピスは、一般に、がんに対する治療ができなくなった際に診療してくれる医療施設です。
宗教的なバックボーンがあるとホスピスと呼称され、またそうではないと緩和ケア病棟と呼称されていることが多いです。医療的には大きな違いがありません。なお仏教系の施設はビハーラと呼ばれていますね。
数はだいぶ増えてきており、日本ホスピス緩和ケア協会に加入している施設だと、340施設7026床(2018年2月20日の時点で)あります。
数が増えましたから、質についても言われるようになりました。
確かにどのような医師が在籍しているかによって、変わる側面があると存じます。
緩和ケア病棟に入りたい場合は、まず入院予約のための面談を受ける必要があります。
この面談の待ちに、1~2ヶ月かかることがあります(施設ごとの差異が大きいです)。
面談が終わり、受け入れ可の連絡が来ると、入院のリストに掲載され、順番が来ると入院になります。
面談終了後、受け入れが決定され、入院の順番が来るまでにもしばらく時間がかかります。
月単位の時間がかかることもあり得ます。
治療が終了にならないと入院予約面談を受けられない施設も多いです。
がん治療はがんがかなり進行するまで継続されていることもあるため、そこから準備を行うと(場合によっては早めに準備を行っても)間に合わないことがあります。
面談待ち+入院待ちで2ヶ月以上かかることもあるので、その前に……となってしまうのです。
少数ながら、治療中から入院予約面談を受けられる施設もあります。それは尋ねてみないとわかりません。
また入院予約面談だけではなく、治療中からの緩和ケア外来を運営している緩和ケア病棟やホスピスもあります。中には他施設の患者さんを外来で受け入れているところもあります。
そのような施設は、早期緩和度が高いとは言えましょう。
緩和ケア病棟は、1日50510円(入院料1。30日までの場合)かかります。
3割負担ならば15153円/日かかります。
ただし高額療養費制度があるため、出費には上限があります。
差額ベッド代を取っていることも多いため(ただし無差額ベッドも設置が必ずある)、それは高額療養費制度の範疇ではないため、無視し得ない出費となります。
最近は長く入院すると、診療報酬が下がるという国の方針があるため、緩和ケア病棟にもあまり長く入院できないように制度設計自体がなっています。
② 緩和ケア外来 早期緩和度(+)<ただし施設による>
2つ目は、大きな病院や緩和ケア病棟・ホスピスの一部が行っている、症状緩和のための外来である緩和ケア外来です。
通院中の患者さんが中心なので、比較的早い段階の患者さんも対象となります。
ただ病院によっては緩和ケア外来がなかったり、あっても身体的苦痛症状が強い場合などに限られたり(つまり早期の不安などは対象にならなかったり)、他院通院中の患者さんは適応にならなかったり(病院ごとに違いあり)など、様々な限界や制約もあります。
緩和ケア外来は、通常の外来診療の費用にプラスして、医療用麻薬が出ている時に限って2900円/月1回(外来緩和ケア管理料)に負担割合を乗じた分がかかります。
③ 緩和ケアチーム 早期緩和度(+/-)<ただし施設による>
3つ目は、緩和ケアの多職種チームである緩和ケアチームです。
入院の患者さんが対象となります。
早期からの介入もしてくれるとは思いますが、施設ごとに差異はあるでしょう。
緩和ケアチームに関してはこのブログで何回か触れていますので、ご参照ください。
緩和ケアチームが1回回診に来ると、その日は3900円/日(緩和ケア診療加算)の負担割合を乗じた分かかります。
30日回診があると、実負担分は3割負担の場合3900×0.3×30=35100円/月かかりますが、入院患者さんの場合は高額療養費制度の限度額に達することが多いでしょうから、それを超えた分の負担はありません。
②も③も熟練の緩和ケア医が在籍しているチーム、あるいは行っている外来であることが、質が高いことを示します。
入院してからの対応となることが多いので、外来と比べると早期緩和度は低めですが、最近は所定の研修を終えた医師と看護師が一緒にがんの病状説明を行うことでがん患者指導管理料1が取れるようになったこともあり、早い段階からの関与も増えています。場合によっては緩和ケア外来よりも先に緩和ケアチームが関与することもあるでしょう。
④ 緩和ケアができる担当医(病院) 早期緩和度(++~-)<医師による差は大>
緩和ケアの基礎的な知識のある医師も年々増えています。
適切に早期から対処を行ってくれる医師もおり、がんと診断された時の担当医が緩和ケアを行うのが、早期の関与度としては最も早くなります。
ただ緩和ケアの習熟度は千差万別です。
担当医あるいは担当医チームによる違いが大きいのは否めないでしょう。
緩和ケアができる担当医に当たるのはラッキーですが、それは外部から見て判断できるものではなく、また担当医自体を選ぶのも一般には容易ではない(病院が決めることである)ため、運に左右されるところが大きいでしょう。
なお緩和ケアの卒後教育の2日間のプログラムを修了している医師は10万人を超えていますが、これを終えているから緩和ケアに習熟しているとは言えません。これ自体はあまり目安にはならないと考えます。どちらかというと、継続的な独習と実践が必要な分野であり、短時間の研修歴は緩和ケアの能力を担保するものではありません。
専門性の違いで優劣ではないですが、担当医に緩和ケアをしてもらっていると思っていても、より何か専門的な見地からはできることもあるケースもしばしばあるため、緩和ケアの専門医や専門部門に併診してもらう価値はそれでもあると思われます。
⑤ 緩和ケアができる在宅医 早期緩和度(+/-)<医師による差は大>
緩和ケアができる在宅医も増えています。
ただ在宅緩和ケアを標榜していても、習熟度はそれぞれ異なります。
今は緩和ケアがある種国の推進計画に含まれるなど流行りのところがありますから、「緩和ケア」と表示している、という側面も見逃せません。
医師により実効性のある緩和ケアができるかどうかは違いがあります。
緩和ケアの専門家が在宅医になったようなケースもあれば、実務の経験があまりないけれども在宅緩和ケアを表示されているような場合もあります。
ホスピス・緩和ケア病棟の勤務歴がある医師は緩和ケアの習熟度が一般に高いと思われますし、できれば最低でも緩和ケアチーム在籍歴や緩和ケア関連施設での定期的かつ一定期間の研修歴があれば、緩和ケアに関しては間違いないと言えますでしょう。
もっとも独学で相当な実力に達している場合もありますから、一概に言えないのが難しいところなのですが。
在宅医の関与で苦痛が十分緩和されているのならば問題ありませんが、今一つの場合は、専門医や専門部門に併診してもらう価値はあるでしょう。
病院に通うのが難しくなってからの在宅医紹介となることが多いことから、早期緩和度としてはそれほど高くありません。
費用としては、在宅医の診療における標準的な費用がかかります。
まとめ
緩和ケアを提供してくれる機関・医師として
① 緩和ケア・ホスピス病棟
② 緩和ケア外来
③ 緩和ケアチーム
④ 緩和ケアができる担当医(病院)
⑤ 緩和ケアができる在宅医
の5つがあります。今後、私が6つ目の種別「早期緩和ケア外来相談」を提供します。
それぞれにメリット、デメリット、早期介入度、費用などの違いがあります。
ご自身に合った機関・医師を選択されるのが良いと思いますし、本稿がその一助になってくれれば幸いです。