Pocket
LINEで送る

緩和ケア病棟・ホスピスに早く入るための4つの方法

何度かお伝えしている通り、緩和ケア病棟に入るのには時間がかかります。

それは緩和ケア病棟の仕組みとも関連しています。

まずは「抗がん剤治療等のがんの治療が完全終了しないと入院予約のための面接を受けられない」施設があります。

それなので、緩和ケア病棟・ホスピスに早く入るためのテクニック1として下記があります。

 

① 治療が完全終了しなくても入院予約面接をしてくれる緩和ケア病棟・ホスピスを予約する

上記のような施設が、各所に存在します。

おおやけに基準を公表していないこともあるので、直接尋ねないとわからないことが多いです。

抗がん剤治療中ならば一律不可という施設もあれば、「これがおそらく最後の抗がん剤治療であり、今のものが効かなくなれば治療法がない」という場合は検討してくれるケースもあります。

ただ一般に、まだまだ抗がん剤治療中には、「入院予約の」面談は受けてくれないことも多いです。

治療を受けながら、という場合は、緩和ケア外来が適応となり、がん治療病院や、ホスピス・緩和ケア病棟の一部もそのような症状緩和のための外来を設置しています。

次に、緩和ケア病棟・ホスピスに早く入るためのテクニックとして下記があります。

 

② 治療終了前から、緩和ケア病棟やホスピスの見学に行って、自分が入りたい施設や待ち時間について十分リサーチしておく

見学を受け入れてくれる施設も多いです。一度見学に行って話を聞いておくという方法があります。

使える抗がん剤をしっかり使った場合は、抗がん剤治療が終了後に残り時間があまりないということはしばしばあるものです。

その時になって、「もう治療法がない」と伝えられ、驚き戸惑い、効く裏付けが乏しい怪しい治療などに執心してしまい、苦痛が取れないばかりか、無用な大金を(あえて言えば)かすめ取られてしまって、悲しい最後の時間となってしまう、というケースもあります。

そうならないため、治療が効くという気持ちは持ち続けて良いですが、一方で有事に備えておくことが大切です。

前もってこのような準備をしておけば、いざというときも「自身の、あるいはご家族の」動きが早くなります。

抗がん剤治療後に緩和ケア病棟に入るためには、これ以上ないというくらいのスピード感をもって話を進めないと往々にして間に合いません

その時に、前もって見学したりなどしてイメージを作っておくこと、入りたい施設などの情報をしっかり持っておくことが有効に作用するでしょう。

 

③ 入院している場合よりも(つまり病院間の転院よりも)、在宅オンリーの患者さんのほうが緩和ケア病棟・ホスピスは早く入院させてくれる可能性がある

A病院に入院している患者さんと、B在宅医が診ている患者さんがいたとします。

A病院は緩和ケア病棟はありませんが、緩和ケアチームはあります。

入院予約がほぼ同じ時期、重症度も同じ、それだと(もちろんリスト順には声をかけるでしょうが)緩和ケア病棟・ホスピスはどちらを優先するでしょうか?

そのような場合に、在宅医だけが診ている患者さんを優先しているようなケースは多そうです。

これにはいくつか理由がありますが、A病院に入院していて緩和ケアチームもあるのならば、喫緊に入院を受け入れなくても対処はしてくれるだろう、と考えるものです。

一方で、在宅医で診ているケースでは、そこから入院の要請があるということは、そもそも在宅では診られない状況になって来ていると判断されます。

私自身は最近病院勤務が多かったですから、在宅医経由のケースが、つまり一度在宅医のみになってそこから緩和ケア病棟に入院したというケースのほうが、自院に入って緩和ケア病棟転院を待っていたケースよりも、スムースかつ早く入院できたケースが多いと感じています。

もちろん緩和ケア病棟・ホスピスごとの考え方がありますが、最近の国の施策では緩和ケア病棟が患者さんを在宅に帰すことを評価しています(率直に言えば、緩和ケア病棟入院料が上がる条件の1つになっているので、病院にはそうしたいという力が加わります)。在宅医との関係が病院にとって重要になっていますので、病院よりも在宅医という力が加わるのはある種当然の帰結です。

 

④ 緩和ケア病棟・ホスピスの入院予約面談はしっかりと希望や状態を伝えて

入院予約面談では、いかに緩和ケア病棟やホスピスに入りたいと望んでいるかをしっかり伝えましょう。

また取れていない苦痛があったり、そもそも消耗が目立って来ているならば、はっきりとそれを伝えたり、状態が良くないということを包み隠さず伝えることが大切でしょう。

ご本人が望めば病状説明を行うことへの同意を入院の条件にしている施設もありますので、それはすぐに同意されるのが良いと存じます(伝え方は配慮してくれるでしょうし、そもそもご本人の希望があるというのが前提です)。

延命を主とした医療行為は行わないことへの同意も必要となることが多いですので、それも知っておかれると良いでしょう。

過度にアピールしても、元々の入院予約の順番がありますから、劇的に待ちが短くなるわけでもありません。

偉い人とのつながりを強調する方も(私の経験では)ありますが、それも(もちろん人にはよると思いますが)あまり有効ではないでしょう。率直に言って、私自身には逆効果でした。

それよりも、医学的に、すなわち体力や状況的に、早晩の入院が望ましいのではないかと自分が、あるいは家族として、考えているということをしっかりと伝えるのが大切です。

 

まとめ

以上、待ちが長く、2~3ヶ月かかることもあり、待っている間に亡くなってしまうというリスクもある緩和ケア病棟・ホスピスに、早く入院するための4つの方法についてまとめました。

何だ、当たり前のようなことばかりじゃないか

と思った皆さんは、正解です。

そう、順番がごぼう抜きになるような特効薬的な方法はありません

重要なこととしては、入りたいならば早め早めに準備を行い、いざ入院予約面談が受けられる条件(しばしば、抗がん剤治療の終了)が得られたならば、「直ちに」面談予約を取ることです。

ただ、それを自身たちだけで行うのは難しいこともあるでしょう。

そこに至る前に、「早期から」緩和ケアを受けていれば、そのことへの助言も受けられ、動きが早くなるはずです。

そのためにも、緩和ケア外来、緩和ケアチームなどとつながっておくと、いざというときの緩和ケア病棟・ホスピスへの入院がスムースになります。

当所でももちろん、療養先の選定から各施設へのアクション等について相談にのることが可能です。

人生の最後の時間を穏やかな環境で、家族にあまり負担をかけずに、と願われているがんの患者さんにとって、緩和ケア病棟・ホスピスは変わらず人気があります。

希望される方はなるべく早く動くこと、知っておかれると良いでしょう。

早期からの緩和ケア外来相談 緩和ケア医(緩和医療専門医)大津秀一

★早期緩和ケア相談所での外来・相談についてはこちらから

 

 

追記 私も現在緩和ケア病棟に勤務しているわけではないので、緩和ケア病棟・ホスピス勤務の医療者の方で、最近は他にも有効と思われる方法がある場合はぜひご意見をお寄せください。

 

 

Pocket
LINEで送る

Share this Post
アバター

About 大津 秀一

緩和医療専門医/緩和クリエーター。数千人の患者さんの緩和ケア、終末期医療に携わり、症状緩和のエキスパートとして活動している。著書や講演活動で、一般に向けて緩和ケアや終末期ケアについてわかりやすくお伝えすることをライフワークとしている。