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胆嚢がんの緩和ケア

2017年のがん統計予測

によると、胆嚢がんは胆管がんとまとめられています。

罹患数は全がんの10位内に入っていませんが、死亡数は10位内に入っています。

胆嚢がんは初期は無症状のことが多く、発見も遅れがちです。

胆嚢は場所が肝臓や胆管に近いため、進行するとそれらの臓器に容易に進展します。

膵胆管合流異常症があるケースは胆嚢がんもハイリスク群(リンク先は英文)です。

日本人は膵胆管合流異常症の頻度が相対的に高く、同病態は先天性のため、他の原因による場合よりも若い年齢で発症することがあります。

胆嚢がんの苦痛・つらい症状と緩和ケアについて解説します。

 

胆嚢がんの体の苦痛症状と緩和ケア

胆嚢がんと痛み

胆嚢がんは初期は痛みもないことが多いです。

しかし進行すると、腹痛、特に右上腹部痛が自覚されることがあります。背中の痛みとして自覚される場合もあるでしょう。

痛みは、必ずしも高度というわけではありません。鈍痛が多いです。

激痛が多い、胆石疝痛(たんせきせんつう)や胆嚢炎の痛みとは異なることが指摘されています。

痛みの形式としては、内臓痛というものに分類されます。

痛みには不快感や重い感じ、気持ち悪さを伴うことがあります。

一方で、痛みとして捉えられていないこともあり、そのような場合は治療が遅れることもあります。

内臓痛は医療用麻薬が良く効きます

また高度進行胆嚢がんに対して抗がん剤治療などを開始しても、抗がん剤が効いて腫瘍が制御されて痛みが緩和されるまでは一般にある程度時間がかかります。

その間、いたずらに苦痛に耐える必要は全くありません

痛みは情動などにも悪影響を与えます。内臓痛は適切に医療用麻薬治療で緩和すべきです。

胆嚢がんは位置としては肝臓に近接していることは先に述べました。

肝臓に浸潤し、肝表面の被膜まで影響が及ぶと、同じく内臓痛を起こします。

医療用麻薬が効くのは同様です。

もちろん医療用麻薬以外の鎮痛薬も状況に応じて使用したり、併用したりします。

アセトアミノフェン3g/日で最後まで痛みのマネジメントが可能だった70代男性の胆嚢がんの患者さんを経験しています。

痛みの具合は人それぞれなので、その方に合った鎮痛療法を行っていきます。

胆嚢がんと痛み以外

食欲不振や嘔気・嘔吐などは他のがんと同様に出現します。

胆嚢がんは、遠くの場所に転移することもありますが、近くに肝臓や胆管などの重要な組織があるので、それらへの進展と諸症状が中心となります。

胆道系に直接浸潤したり、肝十二指腸間膜に病変が及ぶと、胆管を狭窄させたり、閉塞させたりします。これは閉塞性黄疸(おうだん)を起こし、胆管炎になることもあります。

胆道系の閉塞にはドレナージやステント治療が施行されます。

文献的裏付けには乏しいですが、経験として、腫瘍周囲浮腫軽減からの圧迫減少からか、ステロイド使用にてビリルビン値の上昇が止まる場合や低下する場合もあります。他の手段が無効ならば検討されるかもしれません。

肝門脈へ浸潤し、十二指腸閉塞を来たすこともあります。

十二指腸閉塞は嘔気だけではなく嘔吐を繰り返すようになりますから、念頭において早期対処することが重要です。ステント治療等が適応になります。

 

胆嚢がんと心理的な問題、治療に関する問題

胆嚢がんも一般に手強い病気です。

肝臓や胆管という重要な臓器・構造と近く、それらに進展しやすい一方で、無症状で進行し発見が遅れがちであり、あくまで数の上での生存率等のデータは良いとは言い難いです。

進行すると痛み以外にも狭窄症状・閉塞症状を来たし、その身体的なつらさや、繰り返し内視鏡等の処置が必要になることなども、心理的な負担に関係するでしょう。

胆嚢がんの好発年齢は60歳以上ですが、がんの原因の1つとなる膵胆管合流異常症を持っている方の場合は、それが先天性のものであるため、相対的に若く発症する場合もあり、年代に応じた心理・社会的な支援も重要となります。

病期に応じて、手術や化学療法が行われます。治療による合併症や副作用も問題となりますので、その点にも十分な配慮とケアが大切です。

 

まとめ

胆嚢がんも他のがん種と同様に、様々な苦痛症状を起こします。

痛みはもちろんですが、それ以外の症状にもしっかりとした対処が必要です。

胆嚢がんで痛みは多い症状ですが、初期症状は少なく、進行すると上部消化管狭窄・閉塞や胆管閉塞などの多様な症状が出現してきますので、早期対応することが重要です。

他の腫瘍と比較すると、離れた場所への遠隔転移よりも直接的な周囲臓器への浸潤が問題となる特性から、緩和ケアへの依頼が少ない傾向があるかもしれません。しかし、問題は心理・社会的なものなど様々にありますから、総合的な支援のために緩和ケアを活用するのが良いと考えられます。

早期からの緩和ケア外来相談 緩和ケア医(緩和医療専門医)大津秀一

★早期緩和ケア相談所での外来・相談についてはこちらから

 

 

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About 大津 秀一

緩和医療専門医/緩和クリエーター。数千人の患者さんの緩和ケア、終末期医療に携わり、症状緩和のエキスパートとして活動している。著書や講演活動で、一般に向けて緩和ケアや終末期ケアについてわかりやすくお伝えすることをライフワークとしている。