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がんは痛みが出る病気

がんは周囲に浸潤することで、同部位が炎症を生じ、痛みを生成します。

ただしすべての患者さんに痛みが出るわけではありません。

しかし痛みがない患者さんのほうが少数派なので、もしそうであったら比較的ラッキーだとは言えるでしょう。

がんを患っていて痛みが出たらどうするか? について説明します。

 

最初にやる大事なこと まずははっきりと伝える

「はっきりと伝えること」

これが第一です。一番大切。

そんなことは言われなくてもわかる、そう思われる方も多いでしょう。

しかし実際は、(忙しそうだったり、あるいはとっつきづらそうに見えたりなどして)医師に対して妙な遠慮があり、あるいは少しぐらい我慢したら良いか等思ったり、様々な要因ではっきり医師に痛みを伝えない患者さんは大変多いです。

しかも「ついでに」「申し添え」的な、訴え方はNGです。

患者体験がある私から見ても、これは良くありません。

これでは切実さが伝わりません。

訴え方が不明瞭だと、「そうは言っても大した問題ではないのかな」と思ってしまいます(もちろん外来の混み具合や訴え方、医師がそれをすくいあげる人か等によっても左右されます)。

しっかりと症状を述べ、「対処してほしい」「この症状の治療をしてほしい」と、できれば要望も併せて伝えることが良いでしょう。

要望を表現することが、対処をしてもらうことへの後押しとなります。

 

2つ目に大切なこと アセスメント(評価や判断)を併せて聴く

緩和ケアに限らず、医療で大切なのはアセスメントです。

痛い→鎮痛薬 と思いつくのは誰でも出来ると思います(今はインターネットで何でも調べられますから)。

痛い→何が原因か→するとこの薬が効きそうだ、一方で○○さんは腎機能障害があるから使えない鎮痛薬もあるので、……(以下略)→この鎮痛薬が適応です

と医療者は必ずアセスメントを行っています。

このアセスメントの力量に、経験やセンスなどが影響します。

良い診療を受ける、ということ(の大きな意味の1つ)は良いアセスメントをしてもらうということとも言えるでしょう。

それなりに驚くこととして、「痛みの原因についてこれまで聴いたことがない」という患者さんは相当数いらっしゃいます

気になっていないか、というともちろんそんなことはなく、痛いので気になっていらっしゃるのです。

そこで「がんからです」と言われるのも怖いのかもしれません。

ただ原因をはっきりさせ、それを共有し、治療に臨むのが基本です。

もちろん医療者によっては、「この原因は○○ですよ」と言わなくても教えてくれるかもしれません。

しかし、聴かないと教えてもらえない場合もあるのは現実です。

病と立ち向かうためには、知り、理解し、対処法をマスターすることが重要です。

原因を知らなければ、不安なまま生活することになります。

知ることによるつらさもあるかもしれませんが、多くの場合、ことがんの症状に限っては、原因がわかって良かったと仰られるケースが多いです。

 

最後に大切なこと 3つめは緩和の専門家につながるようにすること

緩和の技術は現状まだまだ差があります。

緩和ケアが専門ではなくても緩和ケア医並みに症状緩和ができる医師もいます。

一方で緩和ケアがクローズアップされている時代が時代なので、緩和ケアができると仰っていても……というケースもあるようです(これはまた触れたいですね)。

アセスメントには差が生じます

一般の言葉では「見立て」とも言うかもしれませんが、見立てが秀でていれば、症状緩和につながりやすいです。

医療が細分化している現代では、とりわけ「餅は餅屋」と言えると思います。

担当している医師にしっかりお願いしてもなお、なかなか症状緩和に至らない時は、大きな病院ならば必ずある緩和ケア部門につながれるように動くことです。

もちろんこれも、患者さんが何も言わずとも紹介してくれる医師もいます。

けれども中には、どれだけ症状緩和が為されなくても紹介してもらえないケースもあります。

担当医や外来看護師、その他知っている医療者、病院の相談部門(例えば大きな病院にはがん相談部門があります)などに、「緩和ケア部門にかかりたい」と強く要請することです。

実際、大学病院でも、いくら医療者に話してもらちが明かなかったと直接緩和ケアセンターにお越しになられて、介入することになったケースもあります。

10例よりは100例、100例よりは1000例みている医療者の方が、当たり前ですが、ノウハウを有しています。

担当医が力量があって、こちらがしっかり症状を訴えればそれで適切に緩和してくれることも多々あるとは思いますが、それでもうまくいかない場合は、この3ステップ目が有効です。

同じ病院でしっかり緩和してくれるのならば、移動や時間の手間やデータの把握の点でも一日の長があります。まずそうするのが良いと考えます。

 

まとめ

総じて言えば、がんの痛みに関しては対処法がある程度定まっているため、恐れる必要はありません。

症状の過小申告や我慢は、何の得にもなりません。

人間らしく生きるためには、苦痛が緩和されることがとても大切です。

万が一、自身や周囲の大切な方ががんで、痛みを自覚されているようならば、上の3ステップでまずはやってみてはいかがでしょうか?

早期からの緩和ケア外来相談 緩和ケア医(緩和医療専門医)大津秀一

★早期緩和ケア相談所での外来・相談についてはこちらから

 

 

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About 大津 秀一

緩和医療専門医/緩和クリエーター。数千人の患者さんの緩和ケア、終末期医療に携わり、症状緩和のエキスパートとして活動している。著書や講演活動で、一般に向けて緩和ケアや終末期ケアについてわかりやすくお伝えすることをライフワークとしている。