乳がん治療薬のリボシクリブが生存期間を延長
乳がん治療薬のリボシクリブが生存期間を延長させたと話題になっています。
わかりやすく解説します。
リボシクリブは、選択的CDK4/6阻害薬です。
ホルモン受容体(HR)陽性乳がんでは、エストロゲンの刺激によりサイクリンD1が発現し、CDK4/6が活性化され、その結果として細胞周期が進行します。
選択的CDK4/6阻害薬はCDK4/6を持続的に阻害することで、細胞周期の停止が持続し、腫瘍細胞の老化やアポトーシスがもたらされるとされます。
CDK4/6阻害薬としてはすでに、イブランスやベージニオという薬剤が日本でも使用可能となっています。
今回、ニューイングランドジャーナルオブメディシン(NEJM)という医学において有名な雑誌で研究結果が発表されたので話題になりました。
それは下記の論文です。
試験の名前はMONALEESA-7。
対象は閉経前あるいは閉経期のホルモン受容体(HR)陽性でHER2陰性の進行乳がんの患者さんです。
ホルモン療法にCKD4/6阻害薬のリボシクリブを足して投与して、プラセボと比較しました。
結果は次のように。
42ヵ月時点での全生存率は、リボシクリブ群では70.2%(95%信頼区間は63.5-76.0)、プラセボ群では46.0%(95%信頼区間は32.0-58.9)で、死亡リスクは29%減(ハザード比0.71, 95%信頼区間は0.54-0.95, p=0.00973)。
全生存期間の中央値は、リボシクリブ群はまだ決まらず、プラセボ群は40.9ヵ月(95%信頼区間37.8-推定不可)で、リボシクリブの追加は全生存期間の有意な延長をもたらしていました。
副作用に関しては、グレード3及びグレード4の好中球減少症は、リボシクリブ群の63.5% vs プラセボ群の4.5%と、リボシクリブ群が非常に多い結果でした。
リボシクリブは日本で出る?
さてこのリボシクリブ、日本では未発売です。
しかも、開発が中止されているようです。
進行乳癌に対するCDK4/6阻害薬ribociclibの日本での開発が中止
上の記事にはこうあります。
「詳細は話せないが、パルボシクリブが承認されたことでアンメットメディカルニーズが解決されたことなどによる」(強調筆者)
リボシクリブはイブランスとベージニオどっちに近い?
イブランス→パルボシクリブ
ベージニオ→アベマシクリブ
です。
さて、リボシクリブはイブランスとベージニオ、どちらに近いでしょうか?
先ほどの強調文字を注目ください。
”パルボシクリブが承認された”ので発売中止になったということなのですね。
正解はパルボシクリブつまりイブランスです。
リボシクリブやイブランスはCDK4と6の両方を阻害します。
そのうちCDK6の阻害が、好中球減少症により関連するとされています。
それなので、リボシクリブとイブランスには休薬期間(21日治療し、7日休薬)があります。
ベージニオはCDK6に対してよりCDK4を強く阻害します。
そのため、好中球減少症がリボシクリブほどではなく、継続投与になります。
副作用は先述のようなCDK4と6への作用の強さの違いから、イブランスはより好中球減少症が、ベージニオは下痢が問題となりえます。
ベージニオの下痢は対処法を知っておいたほうが良いので下記で解説しています。
また、イブランス≒リボシクリブ vs ベージニオに関しても下記で説明しています。
イブランスとベージニオどっちが良い?
リボシクリブのまとめ
リボシクリブがホルモン受容体陽性乳がんの生存期間を延長させたと有名雑誌に掲載されました。
リボシクリブはすでに発売されているイブランスと似た薬剤(ベージニオとは少し違う)であり、2019年現在は日本で未発売です。
CDK4/6阻害薬は好中球減少症や下痢等が出現するため、適切な副作用管理が大切で、処方医や緩和ケア医等に対策をよく相談しましょう。