Pocket
LINEで送る

不安が一番多く問題になっていた

 

乳がんは患者さんのためのガイドラインが整備されています。

乳癌学会のホームページで、オンラインで閲覧できます。

日本乳癌学会/患者さんのための乳癌診療ガイドライン

質問に答える形のガイドラインになっていますが、

Q53が「不安です。どうしたらよいか教えてください」です。

Q53.不安です。どうしたらよいか教えてください。

なお、この項目はとても良く書かれていて、乳がん以外の患者さんの役にも立つでしょう。

そこに記されているのが、表題です。

がん体験者の悩みや負担のうち最も多かったのは、症状の問題よりも、なんと

「不安などの心の問題」(48.6%)

だったのです。

不安の内訳に関しては、「再発・転移の不安」と「将来に対する漠然とした不安」が多かったとされます。

なお、がん体験者の悩みや負担を調べた上記の調査は、10年後に2回めが行われています。

その結果が、下記の図です。

がんの患者さんの悩みや負担

がんの患者さんの悩みや負担<がんの社会学に関する研究グループ2013年>

 

このデータからすると、不安は以前よりは減ってはいるようです。インターネットでの情報収集がより一般的になったり、医療者側も不安に対処すべきだという考え方が根付き実際に体制も整備されてきたことなどが関係しているでしょう。

一方で、見ての通り、変わらず「不安などの心の問題」は悩みの第1位を占めています。

余談ですが、もちろん”最初の”気がかりにはならないでしょうけれども、「緩和ケア」に関しては微々たる興味しか喚起していないことが図からは読み取れます。

 

それではどう不安を解消するのか

上述のガイドラインには詳述されており、参考になります。

まとめると次のようになります。

● 不安は正常な過程

なお、2~3週間で前向きになれるとガイドラインには書いてありますが、それは早すぎるかもしれませんね。

● 病気や治療にかかわる不安の多くは、必要な知識の不足からきていることもあります

知らないことが不安につながります。知ることは力です。

もちろん良くない情報を得ることもあるかもしれませんが、それでも結果的には現実と適応することを促進してくれます。

● 話を聴いてもらう

これが基本です。

ただ周囲の方には気を遣うこともあるでしょう。

一方で、病院では医療者が忙しいこともあり、いつも対応してもらえるわけではありません。

私の提供しているようなサービスだと、上述の2つの難しさをクリアできるので、気兼ねなく利用できるでしょう。

● 自分でできることもしてみる(思っていることを書いてみる<匿名のブログなど>)、気分転換する、ストレッチ体操や筋弛緩法(きんしかんほう)、深呼吸(腹式呼吸)といったリラックス法を行う

書くことはおすすめの一つです。

一方で、「身体を動かすこと」はとても良いので、その2つが勧められます。

しかし、一人一人にあったやり方で良いと考えます。

● 医療スタッフと良い関係を築く

重要なことですが、現行のシステムではめぐり合わせがあります。

● 患者会や援助団体を利用する

良い方法です。ただ患者さんのご性格やご病状によっては、利用しづらいこともあるかもしれません。

● 不安が長く続いて身体的な症状が改善しない場合など、専門家による援助が必要なこともある

中にはうつ病などに進展していることもあります。

治療が必要かどうかは、がん治療に詳しい精神科医等(精神腫瘍学の専門家)のほか、精神諸問題に詳しい緩和ケア医などが判断できます。

逆に、それらの専門家ではないと、しばしば見出されずに経過してしまっていることもあるので、注意が必要です。

なお定期的に受診されていると変化に気が付きやすくなります

その点でも早期からの緩和ケアがお勧めされます。

 

不安だけではなくトータルで 今だけではなく過去も未来も考えて

ひとくちに不安といっても、内容は多岐にわたると思います。

思ったことや、わからなくて不安なことは、何でも医療者に尋ねて頂くことが良いでしょう。

不安が痛みを発生させることもあります。

逆に身体の症状が不安を深めることもあります(そのような場合は、もちろん身体の症状の対策が重要になります)。

不安だけではなく、全体を医療者に把握してもらうことが大切で、そのためにはそれをうまく伝えるコミュニケーションが肝要となるでしょう。

なお、対応する医療者としては、これら患者さん全体の状況や、ご家族との関係、これまでやこれからの経過や予測されることを総合的に勘案して、良い策を提案します。

病院によっては、看護師臨床心理士が、患者さんの悩みや不安に継続的に対応するようなシステムを構築している場合もあります。

病院の場合は医師は忙しく、また精神科系の医師が対応するような場合は、身体的諸問題や治療内容についての不安等は尋ねづらいのが通常です。

早期緩和ケア外来のような、緩和ケア医の外来は、医師ならではの知識で幅広く問題に対処できる点がメリットと言えるでしょう。

とにかく抱え込まないことが肝要です。

できるだけすっきりとした気持ちで生活できるように医療者は支援していきたいと考えています。

 

追伸;乳がんの緩和ケアに関してはこちらでも説明しています。

乳癌の緩和ケア 抑うつ

乳がんの緩和ケア 乳癌の早期緩和ケア

レジリエンスを育むことも大切です。

緩和ケアとレジリエンス 「揺れる橋は折れない」

 

不安の解消・改善は、早期緩和ケアクリニック外来の大切な目標の一つです。

 

★診療のサイト

「早期緩和ケア大津秀一クリニック」

東京で緩和ケア外来を行う早期緩和ケア大津秀一クリニックのイメージ

★緩和ケアの情報をわかりやすくお伝えするサイト

「緩和ケア相談所」

早期緩和ケア相談所

Facebookページ

早期緩和ケア外来・相談のFacebookページ」

早期緩和ケア外来・相談facebook

よかったら、いいね、フォロー等よろしくお願い申し上げます。

 

メルマガ「苦しみが軽くなるメールマガジン」登録はこちらからです。

メルマガに登録する

ご登録をお待ちしております。

 

 

 

Pocket
LINEで送る

Share this Post
アバター

About 大津 秀一

緩和医療専門医/緩和クリエーター。数千人の患者さんの緩和ケア、終末期医療に携わり、症状緩和のエキスパートとして活動している。著書や講演活動で、一般に向けて緩和ケアや終末期ケアについてわかりやすくお伝えすることをライフワークとしている。