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問題を取り上げるのがメディア だからこそ

世の中には問題が満ちあふれています。

確かに人の世界は問題が絶えることはありません。それはこれからもそうでしょう。

そのため、不断に問題の解決に取り組んでゆく必要はあります。

一方で、メディアも、しばしばSNSも、問題を提示する場であるために、往々にして取り上げられたある問題が非常に大きな問題であると主張されます。

影響力がある人が広げたりするとさらにその主張は力を持ち、多くの人の目に触れます。

すると時として、その問題が100%誰にも当てはまるように感じて不安が広がるということが、最近しばしば認められています。

私の領域に関連することでは、例えば、

終末期になると意思決定が全くできないので、意思決定できる安楽死がないと不安

緩和ケア病棟では入院が長くなると追い出される

等の問題(話題)が挙げられます。

確かに、終末期になると意思決定が難しくなるのは事実ですし、緩和ケア病棟でも入院日数のことに非常にプライオリティを置いている施設もあります。

けれども、それが全部かというと全部ではありません。

鎮静も含めて意思決定をしっかり自身で行い、望んだように亡くなる方もいます。

あまり入院日数で一律に判断しない緩和ケア病棟にたどり着いて、安心して最後を送られる方もいます。

問題があるのは事実で、良い方向に変えてゆくことは必要ですが、「誰にとっても存立を脅かされるような大変な問題か」というとそうではないかもしれません。

もちろんそれは、だからOKという意味ではありません。

終末期になってもできるだけ意思決定は支援されて、思いは反映されなくてはいけません。それはさらに推し進められてゆく必要があります。

安楽死(医師が致死的薬剤を投与する)や医師幇助自死(医師が処方した薬剤を本人が使用する)を、日本人の総意としてどうすべきなのかはもっと話し合われても良いでしょう(※個人的には、私は自分が死ぬ時も、鎮静があれば十分という立場です。2000人あまりの最後を拝見してきて、そうだと感じているからです。けれども皆がどう考えるか、ということは大切にされるべきだと思います)。

緩和ケア病棟やホスピスの入院期間が長くなると、診療報酬が下がって病院経営にダメージが加わるようになった制度はもちろん変わってほしいと考えます。

けれども、これらの問題が、皆さん全てに現在100%起こる問題かというとそうではないのです。

 

語られない成功例

問題意識が高い人が旺盛に発信し、俗にいうインフルエンサーになっていきます。

そのため、「問題だらけ」のような発信が力を持ちます。

けれども、実は語られない、「ご本人も最後まで満足していたケース」も存在するのです。

私は、全てを理解して自ら鎮静を希望し、実際適時にそれが行われ、事前の十分な話し合いがあったために特にご家族がそれと違った判断をすることもなく、穏やかに亡くなっていったという例も多く知っています。

また、日数で一律判断しない緩和ケア病棟に入院して、安心して最後の時間を過ごしたという例も知っています。

そのため、あらゆる問題は改善に向けて努力される必要がある一方で、ネガティブな側面にフォーカスして問題を非常に大きなものとして取り上げているメディアやインフルエンサーの言葉に左右されないこともまた大切だと考えます。

 

強い不信はコミュニケーションを阻害する

いろいろな言説をニュートラルに読んでいき、冷静さを失わないことの大切さは、がんの放置に関しての言説が燎原の火のように広がっていた2014年、読売新聞の医療サイトヨミドクターでも訴えたことです。

専門家に聞きたい!終末期と緩和ケアの本当の話

流布している言説に影響されて、「医療はこうだから」「医師はああだから」と先入観で見ないことです。

医療も医師も、本当に場所や人によって異なります。

大切なことは、自分が何を希望して、それが叶えられるのかどうか、それはどのような手段をもってなされるのか、それを医療者とよく話し合うことです。

それがしっかりできていれば、変な遠慮をしないでちゃんと希望を伝えてそれを遂行すると約束されているならば、不安になる必要はないです。

実際、このように良好なコミュニケーションを保ち、自らの意思で鎮静の開始を判断したり、緩和ケア病棟で最後を穏やかに過ごされている方もたくさんいます。

流れている情報が自分に当てはまるとは限らないのは、医療のどの分野にも該当することです。

 

まとめ

意思をしっかりと表示され、家族とも十分共有し、概ね適切なタイミングで鎮静が開始になって最後の時間を迎えられた方もいらっしゃいます。

最後まで緩和ケア病棟で問題なく療養される方も多くいらっしゃいます。

まずは自分の意思をしっかりと表示することです。

意外に受け身で、自分としてはこうしたいということが思っていても伝えられていないケースもあります。こと終末期を迎える前に、このような姿勢は変えたほうがメリットが大きいです。

流れている情報は個々には当てはまらないことも多く、影響されすぎず、自分の選択を行い、それが叶えられるように動いてゆくことが大切です。

そして担当医や担当医療者、緩和ケアの担当者などと、よく話し合うことです。

特に緩和ケアの担当者は、不足しがちなコミュニケーションを補ってくれるでしょう。

また、それでもうまくいかない時は、私が相談に乗ります。

いろいろな選択肢がありますが、普段から思いをうまく医療者に伝える習慣をつけておくと、いざという時も役立つでしょう。

良い医療者とめぐり合い、誰もが穏やかに過ごせることを願ってやみません。

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About 大津 秀一

緩和医療専門医/緩和クリエーター。数千人の患者さんの緩和ケア、終末期医療に携わり、症状緩和のエキスパートとして活動している。著書や講演活動で、一般に向けて緩和ケアや終末期ケアについてわかりやすくお伝えすることをライフワークとしている。