再発不安外来を設けています
再発不安外来を設けています。
早期緩和ケアは、再発不安のマネジメントを患者さんと一緒に考えるところに特徴があります。
以前も下記の記事で、それをお伝えして来ました。
特に後者の記事では具体的な対処策についていくつか記してあるので、ご参考にして頂ければと存じます。
もちろん、自分で何とかしようとしたい気持ちもわかりますし、それも重要です。
けれども、自分ではなかなか思考の癖や、知らずに行ってしまっている望ましくないことに気がつけないということもあるのです。
自分のことを自分でマネジメントできる力である「自律」を手に入れるためには、むしろ積極的に緩和ケア医や精神腫瘍学の精神科医など、心理のマネジメントに関して示唆してくれる専門家の助力を借りたほうが良い例がたくさんあります。
誤ったマネジメントを繰り返すと、ますます不安が増えたり抑うつが強くなったり、不眠や動悸、めまい、痛みなどの体の症状となって現れることもあります。
自分ではその考えややり方で数十年生活してきているので、なかなかそこから見方を変えたチェンジをもたらすのが大変なケースもあるのです。
再発不安外来は進行がん心身ケア外来と二本立て
私は前職の大学病院勤務時から、なるべくがんの早い段階から関わってきたとは思います。
それでも、今回早期緩和ケアクリニックを開設し、緩和ケアを専門とする外来を開始して気がついたことがあります。
それは、再発の不安も、個人差は非常にありますが、悩んでいる方にとっては非常に大きな問題である、ということです。
実際に、早期緩和ケアクリニック外来に定期的にかかってくださっている患者さんは、根治が難しいケースでできるだけ心身の苦痛を取り除いて生活の質を保持しようという目的の外来と並んで、再発不安の恐怖やつらさと向き合う心のケアを求めての目的が多いと感じています。
確かに、来る将来と向き合わねばならない根治困難ケースの方の心中も察して余りあります。
一方で、再発するとしないの差が大きな現実、そしてそれが100%は絶対に大丈夫(再発しない)とは払拭できない現実と向き合わねばならない方々のつらさも相当なものです。
実際、高度進行がんのある患者さんは、「今のつらさよりも、再発の不安に怯える時間のほうが怖くてつらかった」とおっしゃいました。
比較ではありませんが、どちらもつらいことです。
ステージⅣの方が集まる患者会での気兼ね
現段階での見える範囲のがんの消失を得て、5年なり10年なりを待っている患者さんの再発不安には、別の問題もあります。
それは、一見、そのつらさが理解されにくい、ということです。
「でも取りきったんだからいいじゃない」
「もっと治らない人とかもいるんでしょ?」
などと、自身の不安を吐露しても、励まされたりしてしまいがちです。
「考えても仕方ないよ」「なるようになるよ」
もちろん、突き詰めてもそう言うしかないのかもしれませんが、時に安易なそのような言葉は患者さんを傷つけます。
パートナーにもなかなか理解してもらえないこともあるようです。
そして、患者会等にはしばしばステージⅣの患者さんが集まられますから、そこでもつい気兼ねして、苦悩を吐露できない、ということも漏れ聞きます。
確かに、その立場になってみると、いかに温かな雰囲気で気兼ねなく話して良いよ、という患者会でも言いづらいかもしれませんね。
実際に、言葉を飲み込んで、「私よりも軽くない方がいらっしゃるようなので、そちらを優先に……」と思ったり言ったりしてしまうという方もいらっしゃいました。
私よりもステージが進んでいる方もいるのに、こんなことで悩んでいるなんて悪い……等と考えてしまうようですね。ちっぽけな悩みであると。
実は全くそんなことないにもかかわらずです。
再発不安も十分つらい
けれども、ステージⅣではなくても、再発不安のつらさも相当なものです。
もちろん前述のように、一切気にならない方もいますし、個人によるばらつきも大きいです。
しかし、ある患者会の方は、再発不安での相談も多いのですよ、とおっしゃっておられました。
そして私の外来におかかりの方にも多いです。
出る結果によって差が大きいのに、100%は保証できないあやふやさを受け止めなければいけない、というストレスフルな5年あるいは10年と言えるでしょう。
残念ながら、スカッと解決するすべは難しいですが、これをきっかけに少しずつ生活や思考を変化させ、不安に負けない心身を醸成することが、長期的に見た時にベストな解決となるのだと考えます。リバウンドを招くような性急な改善ではなく、腰を落ち着けた変化が重要なのだと思います。
再発の不安と対峙する方の苦悩やつらさを、再発不安外来では引き続き緩和していきたいと考えております。
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