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「早期からの緩和ケアは受けられない」
ある医師がそう書いておられました。
確かに、その傾向があるのは間違いない現実です。
しかし早期から緩和ケア外来を利用している方も確実におられます。
実際、当所も早期から誰でも緩和ケアを受けられるようにと設立しており、ここを利用して頂ければ早期から必ず緩和ケアを受けられます。
この形式は日本で初めてだと思いますが、それにより、8月以降は早期から「絶対に」緩和ケアを受けられないということはなくなります。
ただそれ以外にも、私も早期からの緩和ケア外来を行って来ましたし、メッセージをある先生から頂戴したように、その地域の患者さんを早期から緩和ケア外来で診ている医師もいます。
では、どうしたら早期から緩和ケア外来を受診できるのでしょうか。
そうは言っても、患者さんあるいはご家族の動きは必要不可欠
何もしなくても、たまたま主治医の医師が緩和ケアができる先生だった。
何もしなくても、緩和ケアチームに紹介してもらえた。
気がついたら、適切な緩和ケア病棟に紹介してもらえて、間に合った。
中にはそういう方もいらっしゃいます。
けれども、それは「運」が良かったからだと言えます。
なぜそう言えるかというと、私は診ている数が非常に多いので、そうならなかった事例も山ほど知っているからです。
緩和ケアが充実している病院でも、不幸にしていつまでも緩和ケアに紹介してもらえないというケースもあります。
一方で、緩和ケアが手薄な地域でも、幸運が重なって、苦痛が実に少なく療養できる方もいます。
日本のシステムは、ある程度までしか医療者を選べないため、運に委ねる要素が強くあります。その半面、相対的に安価でサービスを利用できます。
私が当所を設立したのも、運任せの要素をできるだけ減らしたいと考えたからです。
しかし、緩和ケアを知らなかったら、あるいは末期という理解で止まってしまっていたら、緩和ケアにつながる可能性は低くなるか、遅れるでしょう。
いくら「早期から」と国や各機関が言っても、そもそも緩和ケアを知らなければ、つながる可能性は上がりません。
その意味で、患者さんやご家族がある程度ご自身で調べる、ということがなければ、早期からの緩和ケア外来受診は難しい可能性があります。
実際私の過去の記憶をたどっても、早い段階から来られていた方は、多くがご自身で「緩和ケアは末期だけではなく」「苦痛緩和のため早期から利用できる」ことを何らかの媒体で知って、アプローチをされた方が多かったです。
患者さんがあまり興味がなくても、患者さんの配偶者の方やお子さんが調べているというケースもあります。
ある40代女性のケースでは、ご主人がよく調べられていて、相当早い段階から動かれ、患者さんが緩和ケア外来に受診することができ、長い病期をともに歩ませて頂きました。
そのようなこともあるので、少なくとも誰か一人でも、病気に対して調べるということをなさっているということが、早期からの緩和ケアにおいては重要だと考えます。
したがって、早期からの緩和ケア外来を受ける方法の1つ目は、緩和ケアについて調べる、ということになります。
最近のインターネット検索では、広告以外はほぼまっとうな緩和ケアの情報が上に出て来ます。
広告に関しては、(高度進行期で)緩和ケアを勧められた人を高額な治療に誘導しようとするものが中にはありますから、スルーするほうが安全だと考えます。
緩和ケア外来があるかを確かめる
まずはインターネット検索がお勧めです。
知りたい情報を収集できるからです。
漠然と調べるのは、前述のような怪しい情報に絡め取られがちになりますので、言葉を絞って検索するのが良いでしょう。
「◯◯病院<かかっている病院> 緩和ケア」
「◯◯病院<かかっている病院> 緩和ケア外来」
などと検索すると、かかっている病院で緩和ケア外来があるかどうかがわかります。
最近は大きな病院は緩和ケア外来を行っていることが多いので、まず検索しましょう。
自分の病院に緩和ケアがない、と即断する必要はありません。
意外と、あるのに気がついていないというケースもあるからです。
インターネットでヒットしなくても、あるいはインターネットが不慣れな場合は、病院の「がん相談」で、それがなければ「総合相談」などで尋ねてみると良いでしょう。
それでも緩和ケア外来が通院している病院にない場合は、少し大変になります。
と言いますのは、近隣の病院に緩和ケア外来があっても、基本はその病院に通院している方、という条件がついていることも多いからです。
他院通院中でも受け入れてくれているようならば、連絡して尋ねてみましょう。
早期からの緩和ケア外来を受ける方法の2つ目は、通院中の病院に緩和ケア外来があるかを把握する、ということになります。
なぜこれが2つ目かというと、次からのアプローチに活きるからです。
主治医にしっかり伝える これが重要な挑戦しがいあるステップ
忙しそうな医師にはなかなか伝えづらい。
しかもお世話になっているのに、他科にかかりたいなどと言っていいのかわからない。
そのような声も聞きます。
しかし、極端に言えば、内科にかかっていても、目が痛ければ眼科にかかるでしょうし、鼻や耳が悪ければ耳鼻科にかかるでしょう。
症状が続いていれば、その一番の専門家にかかるのは何ら気を遣うことではありません。
もちろん私も非常にたくさんの医師と仕事をしてきましたから、非常に理解がある先生から、一切他の科に相談しようとしない先生までいることは存じております。
しかし遠慮していれば、いつまでも苦痛を理解してもらうことは難しいです。
痛みや苦しみは極めて主観的なもので、血液検査でも測定できません。
一般にがんで痛い病気の代表格である骨転移痛も、激しい事例もあれば、軽微なものもあります。
それでも画像では大きな変わりはなかったりするのです。
すなわち客観的には判断できないのです。
私も患者経験がありますから、遠慮する気持ちもわかります。
しかしここでは遠慮は捨てましょう。それしかない、です。
基本的には、緩和ケア外来はかかっている科との併診になります。
また主担当科の同意が必要なケースも多く、それだけ困っていることを主担当医が理解していないと、紹介されることは難しくなります。
断られる場合もあるかもしれませんが、まずは緩和ケア科にかかりたいという意思表示を行わなければ、早期から緩和ケア外来に受診することは困難でしょう。
稀に「うちにはない」「部門が弱い」等と、あまり緩和ケア部門を把握していないあるいは紹介したくない主担当医もいるので、インターネットや相談部門を通しての事前の情報収集がここで活きます。
しっかりと緩和ケア外来にかかりたい由を主担当医に伝えましょう。
これが3つ目の方法になります。
医療者は医師ばかりではない つらさをいろいろな人に伝える
苦痛は医師ばかりではなく、他の医療者にも折に触れて伝えるのが重要です。
ただし、看護師などには伝えるのに、医師には言わないという患者さんがいますが、これはいけません。
肝腎のことが医師に認識されないからです。
外来にも看護師がいます。
外来での抗がん剤治療を受けていれば、薬剤師なども関与してくれるでしょう。
医療者同士はネットワークを持っており、情報はそれなりに筒抜けだと思っておかれると良いでしょう。
それが良い方向に作用すれば、苦痛があるということが共有され、紹介につながります。
私も、一緒に働いていた緩和ケアの看護師が、外来勤務になったので、外来で話を聞いた患者さんを主担当医に働きかけて紹介されるようなケースが増えました。
このように、どこでどうつながっているかわからないので、積極的につらさは伝えるべきです。
これが早期からの緩和ケア外来受診への4つ目の方法になります。
それでも難しい場合は遠慮なく当所 早期からの緩和ケア相談所へ
5つ目です。
手前味噌で申し訳ありませんが、それでも早期から緩和ケア外来にかかれないという場合は適した選択肢となります。
緩和ケア外来も様々なローカルルールがあるので、精神的な問題は非対応など、全ての苦痛に早期から必ず対応してくれるわけではありません(施設差が大きいです。対応してくれるところは対応してくれます)。
4つ目までの手を尽くしても、緩和ケア外来にかかれない、という方は一定数いらっしゃいます。
運に左右される本邦のシステムによっては、不可避のことです。
そのような場合の対応場所として、当所が活用できます。
費用等はかかりますが、必ず専門医が対応し、緩和ケアのかかりつけの患者さんとして以後対応申し上げるという点で、また病院と違ったメリット・デメリットがあります。
もちろん4つ目までの試行錯誤の前に、早めに、緩和ケアの専門医を、緩和ケアの担当医として設けたいという場合も利用できると思います。
また、私を通して(相談所の利用は1回や2、3回程度で)、お住まいの地域の近隣機関の緩和ケアの熟練者につなぐ、という方向性もあるでしょう。最初からご自身で緩和ケア部門にアプローチするよりも、適した方法を伝えられることで、スムースにつながることができるかもしれません。
以上、早期から緩和ケア外来を受ける方法についてまとめました。
やってみると意外に楽ではなく、運も一定以上関係するのが、早期からの緩和ケア外来利用だと思います。
重要なのは、それでも、まず調べることです。これは声を大にしてお伝えしたいことです。
皆さんが必要な際に、早めから、緩和ケア外来を利用できるように願っています。
★早期緩和ケア相談所のFacebookページもフォロー等よろしくお願い申し上げます。