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緩和ケアチームの顧客は2ついるという話

前回、緩和ケアチームの顧客は患者さん・ご家族だけではなく、担当医も顧客であるという話をしました。

緩和ケアチームの”顧客”は2人いる 患者さんと○○○です

緩和ケアチームの顧客は実はさらにもう1人いるとも記しました。

今回はそれを書きます。

 

緩和ケアの起点となるのはこの職種

時代は変わり、少しずつ医師に疑問点や心配事を上手に伝えられる患者さんも増えています。

これはとても良いことです。

従前、医師にはなかなか本音を言いづらい、という状況がありました。

昔々の父性的な医師像が残影のように存在していました。

ただ私も医療を受けての経験が豊富にあるので、やはり忙しそうな医師にはなかなか自分の思いや疑問を上手に伝えるのは難しいということに関しては実感があります。

迷惑をかけることをつい恐れて、ということもあるでしょう。

昔も今も、しばしば(個人差や、各々の関係性があるものの)医師もまたある患者さんの一面の真実をとてもよく知る職種の一つでもある一方で、質・量ともに患者さんの本音に肉薄していることが間違いない職種は看護師です。

実は緩和ケアの開始においても、看護師の動きというものは極めて重要です。

逆に言えば、ここを読んでくださっている方のような一般の皆さんにとっても、看護師に支援してもらうということが緩和ケアに関しても重要である、ということです。

看護師も以前から、患者さんと医師をつなぐ職種の一つです。

医師に伝えにくいことを看護師に伝えることは有効です。

ただし、大切なことまで直接医師に言わないと、看護師も困ります。

医師に直接言わないと始まらないこともありますので、看護師から「直接言ってほしい」という要望があった場合は、それでやってみるほうが良いでしょう。

また医師や治療に対する負の感情を直接「看護師」にぶつけることも、短期的にはスッとするかもしれませんが、総合的に見て(医療チームの関係を損なう可能性があるため)良いこととは言えません。

なるべく冷静に、事実を伝えることが重要なのは、対看護師に限らず、医療職全てに対して当てはまるでしょう。

 

看護師から緩和ケアの介入が始まることは実際よくある

患者さんの本音に近い職種であるがゆえに、その苦悩をまず聴くのが看護師、ということはよくあります。

緩和ケアチーム、緩和ケア医としては、いかに看護師から気軽に相談できるような体制を構築しているかということが重要になります。

医師にSOSが出されるのは問題が相当深刻化してからということもあるため、それより早く問題にファーストコンタクトする看護師から情報が提供されることは非常に大切なのです。

病院、地域の訪問看護師、施設看護師を問わずに、これまで看護師から情報提供が直接もたらされて緩和ケア介入したケースは多いです。

一方で、看護師もまた板挟みになりやすい状況があります。

患者さん・ご家族と担当医の間に、あるときは担当医と医療チームの間に板挟みとなったり、最初に患者さんの苦痛を聴取しうるがゆえの大変さがあります。

看護師の調整役としての大変さや苦悩に関しても、緩和ケアチームが支援してきました。

患者さんの緩和ケアにおいて鍵となる人をサポートすることも、患者さんに最大限の緩和ケアを提供することにつながります。

また、ある訪問看護師とお話しした時には、その看護師は緩和ケアに詳しい(資格もある)ため、開業されている先生から治療について尋ねられることもあるとのことでした。

地域によっては、最も緩和ケアに精通しているのが医師ではないという場合もありますから、そのようなことも良いのではないかと思います。

 

まとめ

緩和ケアにおいては、患者さんやご家族がそうしてほしいと希望して、ということから始まる介入もあれば、医師や看護師が「この患者さんに緩和ケアをしてほしい」と思って、緩和ケアに連絡が来ることがあります。

看護師の勧めや大丈夫という保証で、緩和ケアを受けることを決断される患者さんもいます。看護師がきっかけになることがあるのです。

このように、実は緩和ケア介入となる経路が複数あり、そのためにも「患者さんやご家族は困っていることを身近な医療者にはっきりしっかり伝える」ことが、複数の経路を発動させることにつながります。

ご参考になれば幸いです。

早期からの緩和ケア外来相談 緩和ケア医(緩和医療専門医)大津秀一

★早期緩和ケア相談所での外来・相談についてはこちらから

 

 

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About 大津 秀一

緩和医療専門医/緩和クリエーター。数千人の患者さんの緩和ケア、終末期医療に携わり、症状緩和のエキスパートとして活動している。著書や講演活動で、一般に向けて緩和ケアや終末期ケアについてわかりやすくお伝えすることをライフワークとしている。