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大腸がんの緩和ケア

2017年のがん統計予測

によると、大腸がんは今や「罹患数」の第一位です。

すなわち、現在もっともなりやすいがんとも言えますでしょう。

死亡数でも、大腸がんは総合2位、女性では現在1位です。

全体的にはstageⅣでも長期生存があり得るがん種と言えますでしょう。

ゆえに、長期の治療継続による心身及び経済的な問題なども起きやすいがんです。

 

大腸がんの体の苦痛症状と緩和ケア

大腸がんと痛み

結腸がんはそれ自体は高度の痛みを来さないことが多いです。

しかし直腸にできる直腸がんは、周囲に神経叢(しんけいそう、と読む。神経が集まって網目状になっている部分)が存在するため、高度の痛みとなることがあります。

直腸がんの難治性の神経障害性疼痛は、しばしば医療用麻薬治療でも難渋し、他にも神経ブロックなど様々な治療策を考える必要があります。

長期生存例が増えているために、骨転移など、旧来あまりなかった転移も見出されることがあります。

骨転移は痛い病態の代表的なものなので、適切な対処を要します。

他にも大動脈周囲リンパ節腫脹を来したり、肝転移からの肝被膜痛を起こしたりなど、様々な経緯で痛みが出ます。

特定の部位に痛みが持続する場合は、躊躇なく身近な医療者(特に医師)にしっかりと伝えましょう。

 

大腸がんと腸閉塞

大腸がんは、腸管が狭くなったり、閉塞することで、腸閉塞を起こします。

腸閉塞になると、排便・排ガスが止まり、疝痛(せんつう。間欠的に激しく痛くなったり、痛みがなくなったりを繰り返す。その原因は腸蠕動の痛み)という激しい痛みを引き起こします。

旧来この病態には、鼻から管を入れて、小腸にまで進めて留置することで症状を緩和するイレウス管というもので対処していました。

しかしこれには鼻から管を入れ続けることの苦痛があり、もちろん一時的なイレウス管留置で改善する病態ならばともかく、がん終末期においても留置し続けることの苦痛が問題となっていました。

現在は、ステロイドオクトレオチドという薬剤がこの病態に効くことがわかっているため、イレウス管を留置しないで最後まで診療できるケースがあります。

最近はオクトレオチド(商品名サンドスタチン)よりもステロイドが重要なのではないかという示唆もあり、治療にも新しい知見の集積が認められています。

というわけで、中にはとても腸閉塞になることを心配されている患者さんもいらっしゃいますが、対処法はありますし、抗がん剤でがんの進行を抑えられていれば腸閉塞に進展することは多くないですから、心配しすぎないことが良いと思います。

 

大腸がんの抗がん剤治療でのしびれ

大腸がんの抗がん剤治療では、オキサリプラチンという薬剤(商品名エルプラット)が使われます。

オキサリプラチンはしびれを発生させ、不可逆的になることがあり、以後の生活の質を損なうこともありえます。

治療に伴うしびれに関しては、治療医と十分相談することが肝要です。

 

大腸がんと心理的な問題、経済的問題

大腸がんは、一般的な話としては、膵臓がんや肺がんに比べて(もちろん個人差があるため、一括りにすることは問題もありますが)、抗がん剤を治療等で長期に生存されるケースがしばしばあります。

そのため、私もこれまで、相対的に緩和ケア外来で数多く拝見してきました。

乳がんと同様に、長期に治療を行い生存される、ということに伴う、様々な大変さがあります。

例えば、経済的な負担の問題や、長く続けても根治の可能性が高くない場合に、「治療を続けることの意義があるのか」と悩まれる……というケースがあります。

私自身の経験としては、乳がんと大腸がんの患者さんでそのような悩みの頻度が比較的多かった印象があります。

医師だけではなく、他の必要な職種も交えての問題解決支援が大切でしょう。

 

まとめ

大腸がんも他のがん種と同様に、様々な苦痛症状を起こします。

痛みはもちろんですが、腸閉塞に関しては発症時はしっかりとした対処が必要です。

心理的問題や経済的問題などの社会的問題、治療の長期化とともに不可逆的な神経障害を起こしたり、生きがいの揺らぎなどのスピリチュアルペインを引き起こすこともあります。

他のがんの場合と同様に、継続的・総合的な支援が必要となります。

早期からの緩和ケア外来相談 緩和ケア医(緩和医療専門医)大津秀一

★早期緩和ケア相談所での外来・相談についてはこちらから

 

 

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About 大津 秀一

緩和医療専門医/緩和クリエーター。数千人の患者さんの緩和ケア、終末期医療に携わり、症状緩和のエキスパートとして活動している。著書や講演活動で、一般に向けて緩和ケアや終末期ケアについてわかりやすくお伝えすることをライフワークとしている。