Pocket
LINEで送る

緩和ケアで出費が減ることをご存知ですか?

世の中、何をするにもお金がかかって大変です。

特に医療は、想定外の出費であり、できるだけ安くあげたいという気持ちがあるのは当然でしょう。

緩和ケアを受けるのにもお金がかかります。

中には、早期からの緩和ケアの利点を聞いたことがあっても、「でもお金がかかるから」と厭われる方もいます。

病院の緩和ケアチームとして活動していた際も、「お金がかかるので来なくて良い」と希望される方もいました(実際には、高額療養費制度で実出費は変わりません)。

しかし世界的には研究が進み、緩和ケアを受けてその点でお金がかかっても、トータルでは安くなる可能性があること、皆さんはご存知でしょうか?

 

緩和ケアの恩恵がもたらすもの 出費の低減

名前が「緩和」なので、緩和ケアが症状緩和に役立つことは、すぐにご理解頂けると存じます。

また、これまでの記事でも触れてきたように、問題が大きくなる前に予防する効果も緩和ケアにおいては期待できます。

外来の費用がいくらかかるとは言え、入院すれば、がんの患者さんの場合はすぐに高額療養費制度での費用上限に達することも多いでしょう。

標準報酬月額28万~50万円の場合は、80,100円+(総医療費-267,000円)×1%かかります。

8万円+αはかかるのですね。

もし緩和ケアが、症状の良好な緩和や、未然の問題発生・増悪抑止により、入院予防や、その期間の短縮につながるのならば、出費の減少につながります。

実際、入院が減少するという研究はいくつも存在します。

入院後も、症状の緩和等により早期の退院が期待できるので、出費が減ることが指摘されています。

最近の研究でも、133118人の研究で、約36万円(1回の入院で。3237ドル。1ドル111円で計算)のコストの低減が得られたというものがありました。

 

早期緩和ケアで出費は減らせる可能性

研究途上という状況で、日本に上記の研究群を適用できるかどうかはわからない部分もありますが、苦痛を緩和することは、また適切な意思決定を支援することは、出費を抑えることにつながる可能性があるのです。

例えば、緩和ケアの最も知られている対象の1つである痛みも、著しくなれば、入院となってしまうでしょう。

そうならないように(外来で対処できるように)適切に鎮痛薬を調整すれば、入院を回避でき、すると1回約8万円(高額療養費制度適用時)の出費を抑えられます。

問題を先送りにすると、結局顕在化したそれによって、より多い出費が強いられる可能性があるのが、軽くない疾患の場合です。

結局、先に払った場合のほうが、トータルの出費を抑えられる、ということも十分あり得るでしょう。

先回りして問題に対処し、予防まで行うのには、5分や10分の診療では難しく、そのため緩和ケアの外来には時間がかかります。

また現状のシステムでは、あまりにも病院にとってのコストパフォーマンスが高くないので、緩和ケア外来を拡充することは現実的ではなく、また全ての患者さんが早期緩和ケアを希望すると病院の緩和ケアの専門的担い手はパンクしてしまうでしょう。

当所の緩和ケア外来相談は日本のその現状を補うものです。

緩和ケアには「出費の低減」という効果もありうるのだということは知っておいても良い情報でしょう。緩和ケアを受ける支出で、苦痛の緩和だけではなく、結果的にその支出を帳消し以上にすることができるかもしれません。

もちろん費用の低減は、早期からの緩和ケアが目指している要素の一つで、他にも患者さんと求めにいく効果は様々にあります。ただトータルでは安価になり、経済的な負担が減る可能性があるというのは大きなメリットだと考えます。

早期からの緩和ケア外来相談 緩和ケア医(緩和医療専門医)大津秀一

★早期緩和ケア相談所での外来・相談についてはこちらから

 

早期緩和ケア相談所のFacebookページもフォロー等よろしくお願い申し上げます。

 

 

Pocket
LINEで送る

Share this Post
アバター

About 大津 秀一

緩和医療専門医/緩和クリエーター。数千人の患者さんの緩和ケア、終末期医療に携わり、症状緩和のエキスパートとして活動している。著書や講演活動で、一般に向けて緩和ケアや終末期ケアについてわかりやすくお伝えすることをライフワークとしている。