緩和ケアチームを知っていますか?
国の緩和ケア普及の施策もあり、今は大きな病院ならばたいてい緩和ケアチームがあることは何度か書いてきた通りです。
緩和ケアチームは治療中からの緩和ケアの一つの要的な存在です。
患者さんやご家族が、担当の医師に要請することで、そこからチームに連絡が来て、直接介入が始まります。
黙っていても紹介してくれることもありますが、多くは要請しないとつながらないことは既報の通りです。
もちろん依頼が来ないケースもあるために、私が所属しているチームが工夫していたように、そのような場合の対策も幾重に張り巡らせておく必要があります(そうしないと依頼が来ない方を支援できません、という欠点があるためです)。
医療に”客”という響きはあまりそぐわない印象があるかもしれませんが、医療も一部サービスに属していますから、サービスの受け手つまりお客さんの期待に応じなければ、早晩チームはそっぽを向かれて依頼が途絶えてしまいます。
そうすると、結局多くの患者さんを助けられないことになります。
緩和ケアの顧客とは一体誰?
というわけで勘の良い皆さんはもうわかったかもしれません。もう1人の顧客
患者さんの他にもう一つの顧客。
……
それはご家族です
…………では当たり前過ぎますね。
患者さんやご家族は、緩和ケアチームにおいて、基本的なサービスの提供先です。いわば当然のことです。
実はもう一つ、緩和ケアチームが顧客としているものがあります。
すでに皆さんはおわかりかもしれません。
現場では比較的明らかなことであり、実際とある緩和ケアチームのマニュアルには、いかにそのお客さんの意に沿うべきかを滔々と説明しており、それはそれで向いている方向が片一方過ぎるのではないかと感じたことがあります。
そう、依頼主たる医療者つまり担当医です。
治療中からの緩和ケアにおいては、担当医と歩調を合わせて緩和ケアを提供することが必要になります。
依頼してくれる担当医も、患者さんやご家族と同様に、しばしば何かに困って相談して来られます。
その困りごとに、患者さんやご家族と同様に、的確に対処する必要があります。
往々にして、患者さんやご家族の困っていることと、担当医の困っていることが異なることもあります。
例えば、患者さんは痛みに困っているけれども、担当医は患者さんのご不安が強く、治療に関する情報を提供してもなかなか理解していただくことが難しいと感じており、そこに困難を感じている……などです。
担当医が「緩和ケアチームに依頼してよかった」と思わないと次第に緩和ケアチームへの紹介が減ってしまいます。
逆に、「頼んで良かった」あるいは「期待通り、あるいは期待以上」と感じてくれれば、また依頼してくれるようになります。顧客満足が高いので、リピートしてくれ、結果的に依頼が増え、患者さんがたくさん緩和されることになります。
かと言って、担当医のことにばかり注目して、肝心の患者さんやご家族のほうを緩和ケアチームが向いていないと思われてしまうと、患者さんやご家族も失望されてしまいます。
このバランス感覚が緩和ケアチームには必要であり、実は緩和ケアチームが関わっている場合には、見えない部分で間断ない折衝が続けられているものなのです。
緩和ケアチームで8年経験
緩和ケアチームで8年を経験しました。
私が着任する前は、年間の緩和ケアチーム紹介数は約180名でした。
以後は右肩上がりに紹介が増えていき、現在は320名/年です。
緩和ケアチームのもう1つの顧客を意識し、動いてきたことが、どうやら良い影響を及ぼしてくれたと肩をなでおろしております。
勤務病院のチーム看護師がアンケート調査を行ってくれて、医師からも予想以上の割合で緩和ケアチームへの依頼に好意的な評価を得ており(これは数年前学会で発表されました)、これは大変うれしいことでした。
本年4月現在で、緩和ケアチームで拝見した患者さんが2512名ということを相談ページで紹介しています。
ということは、延べ2512名の医師からご紹介いただいたということでもあり、治療医師とのコラボレートの多さを示していると思います。
このように早期からの、治療中からの緩和ケアにおいては、患者さんをご覧になっている医師と協働するということが、ある種核心の仕事の1つと言え、患者さんから伝えられていないことを担当医に伝え、逆に担当医から患者さんに伝えられているけれどもあまり届いていないことを補足支援するなど、双方の調整役としての働きも行っているのです。
実は病院の緩和ケアチームにはそれ以外にも、もう1つの顧客がいます
それは誰……あるいはどういう集団(これだと答えはわかるかもしれません)があると思いますか?
この方々もまた緩和ケアチームへの依頼に大きな力を持っています。
誰でしょうか?
長くなりましたので、答えはまた。