余命告知は、ご存知の通り、難しい
「先生、私の余命はどれくらいですか?」
よく聞かれます。
「主治医の先生に聞きましたか?」と尋ねると、
「聞きました」という場合が半分、「聞けていません」という場合が半分くらいですね。
一般の外来の短い時間では、聞く側も大変でしょう。
一方で医師側も、「わかりません」「なるようにしかなりません」「気にしても仕方ありません」等と、短い時間では結論だけを伝えざるを得ないこともあり、お互いのフラストレーションの元になってしまっていることがあるようです。
余命予測は実際のところ当たるのでしょうか?
生存期間中央値や5年生存率は目安未満
生存期間中央値や5年生存率は、よく言われるように、あくまで目安、いやそれ未満です。
生存期間中央値は、その調査を行った人たちの「真ん中」の値に過ぎません。
それなので、気持ちはわかりますが、数字にとらわれないようにしましょう。
それと同様に、後で解説する例外を除いて、余命は本当にわかりません。
医師が良かれと思って言わないわけではないのです。隠しているわけでもありません。
大切なのは、(可能性が高い)良い治療を選択し、満足できる生活を送ること。
そして、不安や身体のつらさは緩和ケアで改善・解消すること、これに尽きます。
繰り返しますが、長い余命予測は当たりません。
数字を考えても仕方ないので、あくまで(参考になるかも微妙ですが)目安未満ととらえることは声を大にしてお伝えしたいところです。
余命3カ月以内になったらわかる
先ほど「例外」の話をしました。
その例外は、がんの場合、「余命が残り少なくなった場合」になります。
もともと、本邦で開発されたPPI(Palliative Prognostic Index)など、いくつかの予後予測の指標がありましたが、これらも基本的には短い月単位の予後を予測するものです。
先月、筑波大学の浜野淳先生を中心とする日本のグループが、予後予測の手法を開発したことが報じられました。
日本語記事;筑波大、生存確率を高精度に推測 緩和ケアの進行がん患者
客観的データを中心とし、「7日後、14日後、30日後、56日後、90日後それぞれの生存確率を推測できる計算式」で「予測精度は7日後で77%、90日後では92%」とのことです。
これまでの、予後が短い月単位ならば予測できる、という指標の一つの進化形ですね。
余命3カ月になればわかる、ということを裏返すと、「余命が3カ月にならないとわからない」ということでもあります。
この3カ月を皆さんはどう思われますか?
そこから何かをするのでは遅いという印象があると思います。
その通りです。
それなので、余命の予測をする前に、日々を充実させる、悔いがないように生活する、ということの大切さが、ここからも示されていると考えられるでしょう。
緩和ケアと余命もナンセンス
緩和ケアと余命に関しても、気になる方が少なからずおられるようです。
ただ、緩和ケアと余命が関係ないことは、このサイトをご覧のような皆さんはご存知でしょう。
一般的には、国の診療報酬改定で、ホスピス・緩和ケア病棟での長期入院が難しくなっているため、ホスピス・緩和ケア病棟の入院期間は短めになりがちです。
ただ緩和ケア自体は、早期からでも適応になりますので、「緩和ケアを受けているので予後はこれくらい」ということは一律に言えません。
ましてや早期緩和ケアは、長期の生存を目指していますから、余命が云々ではありません。
緩和ケアの進歩で、かなり遅くまで元気なように見えたり思えたりする方が増えていますから、終末期の急な状態変化があった後の時間は短い印象となりがちです。
それを織り込んで、やるべきことは前倒しして、やり残しがないように動くことが重要になります。
まとめ
述べてきたように、余命予測は当たりません。
気になる方は、聞くのを止めましょう。
また余命予測の指標も、当たるのは3カ月以内からです。
それなのでたとえそれがわかっても、「やりたいことややり残したこと」をそこから始めても間に合いづらいです。
結局は、そのようなことは早めにやっておくのに越したことはありません。
余命に関しては、専門家ではないと、上記のような詳しい解説なく数字だけ告げられてしまって、非常にストレスとなることがありますので、綴ったような内容を理解した上でお尋ねになるのが良いでしょう。
それに、「気にしても仕方がない」とも言えるとは思います。
ただ考えようによっては、「あなたの命はこれこれまで」と確度を持って規定されるよりは、良いのかもしれません。逆算だけで生きる人生が、はたして生活の質に満たされているかはわかりませんから。
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