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早期からの緩和ケアと言うものの……お役所でも
もちろんおかかりの医師、医療者、施設によっては早期から緩和ケアを受けることができている方もいます。
しかし総じて、早期から緩和ケアは提供できていないとも言えます。
先日某役所に行きましたが、担当の方も「早期緩和ケアとはどういう意味ですか?」と尋ねて来られました。
「緩和ケアって末期ですよね。それに早期?」と。
批判ではありませんが、国ががん対策推進基本計画で5年以上「早期からの緩和ケア」を謳っているにもかかわらず、それは一般の方に届いていません。
政策でなんとかする、というのには限界があります。
むしろ政策で強制的にあれもこれもと押し付けることは、現場の医療者を臨床から引き剥がすことになります。
何らかのブレイクスルー(行き詰まりの状態を打開すること)が求められていました。
「アクティブ緩和ケア」が押川勝太郎先生により提唱される
そんな中、がん医療の専門家であり、優れた臨床家でもある押川勝太郎先生により、「アクティブ緩和ケア」という新たな概念が発表されました。
これは現状の打開のために確かに有効で、またコペルニクス的転回の考え方です。
いやむしろ、一部ではなく、大部分の患者さんが早期から緩和ケアを受けられるようにするという目標からは、「この道しかない」と考えられるものであり、それに思い至られた先生の深い洞察を感じるものです。
国は緩和ケアを普及させようと、緩和ケア研修会に医師をとにかく多く参加させたり、拠点病院の緩和ケア部門にクリニカルパスなどを整備させ、緩和ケア連携手帳などを作って連携を深めようとするなど、上からのアプローチを続けてきました。
ただそれがうまくいっているのか、というと、もちろんうまくいっていると表現する論文もありますが、なかなか判断が難しいところであるのも事実であると個人的には思います。
当然、それに尽力してきた方々の努力や熱意には敬意を払っており、そのようなアプローチも大切です。
しかし、それは医療者側に集中したものであったことも事実だと存じます。
患者さんやご家族からの要望がなければ、気の利いた医療者や緩和ケアに通じた医療者が担当にいて勧めない限り、早期からの緩和ケアなど夢のまた夢です。
また緩和ケアとは、患者さんが病と付き合う力を高めるアプローチでもあります。
その点で、医療者が施すというものよりも、インフォームド・コンセントが本来は患者さんが主語であるように、患者さんが主体的に緩和ケアを求め、手に入れ、実践するというあり方が求められ、そして重要なのではないかとも考えられます。
それを世に出したのが、押川先生です。今後の発展が楽しみな概念・言葉です。
動画公開「緩和ケアの革命・アクティブ緩和ケアとは何か?(総論編)」
「早すぎた」緩和ケア外来受診だと思ったことは1度もないという事実
この緩和ケア外来が「早すぎる」
そのように思ったことは、私には一度もありません。
あえて言えば、「遅すぎる」ことは圧倒的に多いです。
私はいつも、「もう少し早く来てくれれば」そう感じて仕事をしてきました。
正しい選択を支援し、もっと長生きできたかもしれない。
こんなに苦しむ必要はなかった。
不安はずっと前に軽減されたはず。
そのように思うことはしばしばあります。
末期中の末期になると、鎮静しか有効な方法がないこともあります。
緩和ケアはもっともっとたくさんのことができるケアであり、医療なのです。
全く遅くなかったタイミングの患者さんは数人
緩和ケア外来が「早すぎる」、そのように思ったことは、私には一度もないと書きました。
稀に、「まったく遅くない」そう私でも思う患者さんがいました。
その方の1人は、今から10年以上前、私が京都にいる頃でした。
60代の彼の病気は急性白血病。京大病院に通っていましたが、緩和ケアに受診するため、主治医に要請して紹介状を書いてもらって、私の勤務していた日本バプテスト病院の緩和ケア外来にやって来られました。
治療中でしたし、まだ終末期ではありませんでした。
がん対策基本法ができたばかりの頃で、しかも血液のがん。
(その当時として)普通だったら絶対に緩和ケア外来に来ない患者さんです。
彼は「ようやく来れたよ」と穏やかにおっしゃいました。
「いずれ死ぬことになると思う。ただそれまでをできるだけ穏やかに過ごしたい。それが望みです」と。
身体の苦痛はなく、外来ではいつも、世界や人間、生き方などの話でした。
今で言う、「がん哲学外来」のような定期受診でした。
彼にはいずれの先が見えていました(しかしその時にはまだそのような兆候はなかったのも事実です)。
人生の幕を下ろす前に、この世のことを深く考えていきたい、そのような思いと、きたるべき時が来ても徹頭徹尾苦痛は緩和してほしい、それを感じる外来でした。
望外に彼は長生きをされ、私が京都を離れた後、急性白血病がいよいよ悪くなり、ホスピスに入って亡くなりました。完璧な準備でした。
超早期緩和ケア宣言
私は「早期からの緩和ケア」を超える、「超早期緩和ケア」を提言したいと思います。
なぜ超早期か。
それは患者さんやご家族が「早期」と思っていらっしゃっていても、まだもっと早いほうが良い可能性があるからです。
早期を超えるはやさでの受診が、実はベストタイミングかもしれません。
実際、先述の急性白血病の患者さんは、「このタイミングで良かった」と仰っていました。
進行したがんの患者さんを待ち受ける落とし穴は様々にあります。
間違った選択をすると、命の長さにも影響しうることもあります。
しかも切羽詰まっていると、普段冷静でいても、甘い言葉や選択に心を絡め取られてしまうこともあります。
だからこそ、前々から、正しい知識や向き合い方を身につけられ、また相談できる専門家を確保し、自身の身体と心、命を守ってゆくことが必要なのです。そのための早期からの緩和ケアです。
それを確実に可能とするため、
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「緩和ケアは早いと思っても遅い。早過ぎると思って受診する超早期緩和ケアがベストタイミング」
「緩和ケアと言われる前に自ら始める・できる超早期緩和ケア」
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