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2018年9月16日、前日の15日に樹木希林さんが亡くなられたと報じられました。

改めて、乳がんの末期時の症状と、元気で長生きし苦しい症状を治すために最低限知っておくべきことや緩和ケアについて考えてみたいと思います。

なお、今回の記事は末期に関することなので、無理に読まないでください

特に患者さんは、心身の調子が比較的良く、またこのような情報を欲している場合に限りご覧ください

無理して読んでも良いことはありません。必要になった際で十分です。

 

 

 

 

 

骨転移では亡くならない

言われているように、乳がんでも頻度が多い骨への転移では、直接的な亡くなる原因にはなりません。

もちろん痛みなどは相当な苦痛になりますので、十分な緩和ケアが必要不可欠です。

また骨転移から骨折に至る事例も存在します(ただし樹木さんの場合は、骨折が骨転移によるものかどうかは報じられていません)。

骨折も一般にかなり痛いです。また、推測される余命に応じて、手術が為されたり、保存的に経過を観察することが選択されたりします。

骨折や骨転移による痛みは、活動範囲を狭め、間接的には衰弱をもたらしえますが、直接的に命そのものに影響を与えるわけでもありません。

しかし、骨転移と悪液質の関連も示唆されるなど、注意は必要です。

 

では、どのような事例があるのか?

最初に確認しておきますが、乳がん自体はがんの中では長期生存が期待できる腫瘍です。

また次々に新しい薬が投入されています。

それなので誰もが末期になるわけではありません

しかし、私は仕事柄、多くの末期の患者さんもまた拝見して来ました。

治療の甲斐なく命が、という場合は、重要な臓器の障害によります。

末期乳がんのしばしば拝見する病態についてご説明します。

 

がん性リンパ管症

に起こる病変です。

微小な転移が、リンパ液の流れを塞ぎ、肺に病変が出現します。

症状としては、呼吸困難や咳などです。

ステロイドの使用や、酸素投与、医療用麻薬(呼吸困難や咳に効くため)の使用などが行われます。

しかし最終末期になると、症状緩和のために鎮静を用いる必要もあります。

がんの症状緩和の鎮静について

総じて手強い病態です。

 

がん性髄膜炎

がんが脳脊髄液を介して脳の表面や様々な脳内のスペース(くも膜下腔、脳室内、脳槽内等)に進展・浸潤した病態で、あらゆる精神神経症状を起こしえます。

参考;がん性髄膜炎

ステロイド投与や放射線治療、髄腔内化学療法などが行われます。

高度に進行すると、良い治療策に乏しいです。

最終的には意識レベルが低下し、苦痛からは解放されますが、それ以前の段階が拝見しているとつらそうで、緩和ケアの専門家の関与が望ましいです。

 

高度肝転移からの肝不全

肝臓は非常に余力がある臓器なので、多少転移がある程度では肝不全になりません。

肝転移が極めて進行し、多数存在するようになると、肝不全が出現することがあります。

この場合は、黄疸などが出現します。

ただし相当進行しないとなりません。

肝臓全体を腫瘍がほぼ占拠するようなことになると、最終的には生命維持が困難になってしまいますが、肝不全が最終末期になると、倦怠感やせん妄などが増悪しますので、やはり鎮静が必要となることも多いです。

がんの症状緩和の鎮静について

ただ、肝転移があってもそこから治療に反応して改善することもあるため、肝転移=終末期と即断する必要も全くありません。むしろ心配しすぎないで良いと存じます。

 

まとめ

どの腫瘍でもそうですが、最終末期には改善が難しい病態が出現してきます。

乳がんは悪液質の頻度が他疾患より高くないという指摘もあり、消耗性の感染性の問題が繰り返し起きてくるというよりは、上述のような病態がしばしば最後に出現してきます。

とはいえ、症状緩和のためにできることはあります。

回復は困難でも、できる範囲で軽減できるように手を打ちます

特にがん性髄膜炎など難しい病態もあるのですが、緩和ケアの担当者は知恵の限りを尽くして対応しています。

一般には馴染み深いものではない情報ですが、中には知りたいという方もおられるため、記しました。

ただ必ず、医療者は見捨てることなく、最後まで症状緩和などでできることを探っていくものです。

安心して、とにかくつらさは相談して頂きたいと思います。

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About 大津 秀一

緩和医療専門医/緩和クリエーター。数千人の患者さんの緩和ケア、終末期医療に携わり、症状緩和のエキスパートとして活動している。著書や講演活動で、一般に向けて緩和ケアや終末期ケアについてわかりやすくお伝えすることをライフワークとしている。