緩和ケアの歴史を年表にまとめてみました
緩和ケアはどれくらい前からあるか皆さんはご存知でしょうか?
19世紀のアイルランドで、修道女メアリー・エイケンヘッドがホスピス活動を行っていました。それが近代ホスピスの源流とされています。
現在の緩和ケアが形成されるのに決定的に重要な働きをされたのがシシリー・ソンダース医師で、彼女によって1967年イギリスに設立されたのがセント・クリストファーホスピスです。
世界と日本の緩和ケアに関する歴史を簡単にまとめたのが次の年表です。
まずは世界でも、緩和ケアはターミナルケア、つまり終末期のケアから始まりました。
1960年代に、全人的なケアを提供するホスピスケアが提唱されます。
世界初の緩和ケア病棟は、意外にもアメリカやイギリスではなく、カナダで設立されました。
そのカナダで、終末期に限らず、全人的に苦痛を把握し改善する、という今日の緩和ケアの考え方が提唱されたのは1970年代とのこと。
1973年、淀川キリスト教病院で「末期患者のケア検討会」が開始され、それが日本におけるホスピスケアの始まりとされています。
1977年には日本の在宅医・鈴木荘一先生がシシリー・ソンダースに会いに行って、日本にホスピスとその医療について紹介なさっておられます。
1981年には日本初のホスピスが聖隷三方原病院に開設されました。
近代ホスピスにおいて非常に重要な存在であるセント・クリストファーホスピスの設立が1967年で、日本初のホスピスが1981年ですから、14年経過しての設立でした。
日本の緩和ケアの歴史
日本の緩和ケアの歴史を簡単に年表にまとめました。
日本で2つ目のホスピスは、1984年淀川キリスト教病院で開設されています。
(なお、年表に入っておりませんが、日本初の小児のホスピスも同病院で2012年に開設されました)
緩和ケア病棟は、運営に費用がかかります。
普及の後押しとなったのは、やはり1990年の緩和ケア病棟入院料の新設でしょう。
これに伴い、手厚い人員を擁するのに必要な診療報酬を病院が得られるようになりました。
それでホスピス・緩和ケア病棟は増えることになりました。
ただこれらはあくまで、主として終末期に入院するホスピス・緩和ケア病棟の話です。
1990年代から緩和ケアチーム活動が大学病院では行われていたとされます。
一般病院でも緩和ケアが行われるようになったのは、2002年に新設された「緩和ケア診療加算」の存在が大きいです。
これにより緩和ケアチームが診療報酬を得ることができるようになり、チームの結成が各病院で進みました。
緩和ケアチームは、早期からの緩和ケアを提供することに問題はありません(病院によって差があります)。
そこで私も2010年、前職の大学病院着任後、早期からの緩和ケアを行って来ました。
2013年から限定的な形ながら他院通院中の(治療中の)患者さんの外来緩和ケアを開始、2015年より「地域緩和ケア外来」を開設しました。
「早期からの緩和ケア」を名称に冠した初の病院外来は、2015年川崎市立井田病院の西智弘先生により開設されています。「早期からの緩和ケア外来」(正式名称;腫瘍内科緩和ケア初診)で、川崎市内在住のStageⅣの患者さんを対象としていました。
2016年に新宿ヒロクリニックにより、東京がんサポーティブケアクリニック(院長;向山雄人先生)が、がんの患者さんに、支持療法(緩和ケアを含む)を提供するものとして設立されています。
これまで、がん以外の病気も対象とし、クリニックで早期からに特化した外来診療を行い、全国どこでも遠隔診療を用いて対応する、という早期緩和ケア特化型の診療所はありませんでした。
早期緩和ケア大津秀一クリニックが日本初となります。
一つの合理的な形ではあると思いますので、今後同様な形式の診療所もこれから増えて来ると思います。
まとめ
日本の緩和ケアの歴史を簡単に述べました。
それは、先人たちが苦悩する方々のためにと努力してきた賜物です。
私も新しい形式を用いて、これまでの形では支援が届いていなかった方々にケア・医療を提供するべく、努力を続けていきたいと思います。
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