分子標的薬で間質性肺炎になりやすい人
旧来の抗がん剤と比較して、分子標的薬という薬剤の一群は、がんに対してやや特異的に作用するため、抗がん剤で一般に認められるような副作用が少ないという特徴があります。
一方で、間質性肺炎という難治性の肺炎を起こすことでも知られています。
かつて出始めたばかりのイレッサ(ゲフィチニブ)が原因の間質性肺炎で死亡者が数多く出たことはご存知の方もいるでしょう。
ではどのような人がこの間質性肺炎を起こしやすいのでしょうか?
日本人の肺がんと間質性肺炎の研究
日本人による研究が発表されています。
それらによると次のような人が間質性肺炎を起こしやすかったです(肺がんの場合)。
◯年齢は55歳以上
◯パフォーマンスステータス(WHO)が2以上<2は”50%以上の時間起居しており、歩行可能であるが作業活動は実施できない”なので、それより活動できない患者さん>
◯喫煙歴がある
◯間質性肺炎罹患歴がある
◯非小細胞肺がん診断から6ヶ月未満
◯CT画像上で、正常肺が50%未満
◯心血管系の合併症がある
間質性肺炎を起こした後、予後が厳しいのは?
ひとたび間質性肺炎を起こした後に、見通しが良くない可能性が高い群も調べられています。
それは下記の特性を持つ方たちでした。
◯年齢は55歳以上
◯喫煙歴がある
◯間質性肺炎罹患歴がある
◯CT画像上で、正常肺が50%未満
◯胸膜が癒着している領域が50%以上ある
間質性肺炎を起こしやすい群とある程度一致していますね。
間質性肺炎になると呼吸困難などの症状も増悪しますし、致死的となる可能性もあります。
治療のために使った薬剤で命を落とすことはなるべく避けたいことです。
それなので、上記のような特性を持つ方たちは、十分に医師と治療について相談し、いざ発症した際の対応についても前もってよく知っておく必要があるでしょう。
間質性肺炎と緩和ケア
間質性肺炎が生じた場合の苦痛緩和は、肺がんの苦痛緩和に準じます。
治癒不能かつ極度に息苦しさが強く、余命も厳しい状態では、鎮静も検討されるでしょう。
まとめ
分子標的薬や、オプジーボなどの免疫チェックポイント阻害薬は、有用な薬剤です。
一方で、これらの薬剤には、間質性肺炎という重大な副作用があります。
起こらない方には一切起こりませんが、起こると大変です。
上に挙げたようなリスクのある特性を有している方が分子標的薬等を開始する際は、医師や医療者とよく事前に相談し、対応も取り決めておく必要があるでしょう。