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糖尿病も緩和ケアの対象になります

糖尿病も緩和ケアの対象です。

下記のブログ記事でお伝えしましたが、

がん以外の患者さんが1人も来られません 緩和ケアの適応疾患はどれ?

Global Atlas of Palliative Care at the End of Life」(終末期の緩和ケア世界地図とでも訳されるでしょうか)によると、

◯心血管疾患

◯がん

◯慢性閉塞性肺疾患

◯AIDS

◯糖尿病<★神経障害等を起こしますね>

◯腎臓病

◯肝硬変

◯アルツハイマー病など認知症

◯多剤耐性結核

◯パ-キンソン病

◯関節リウマチ

◯多発性硬化症

これだけの病気が緩和ケアの対象として挙げられています。

しかもこのうち、

◎がん……糖尿病の患者ではリスクが高まる

◎腎不全…特に終末期に緩和ケアが必要となる

◎認知症…アルツハイマー型認知症に約1.5倍なりやすく、脳血管性認知症に約2.5倍なりやすい

など、糖尿病が他の緩和ケアを必要とする病気を誘発することがあります。

終末期に限って言えば、上述の世界地図によると、緩和ケアを必要としている患者全体の4.59%を糖尿病が占めています。

緩和ケアのニーズ 慢性心不全等の心疾患がトップ

 

糖尿病と体の苦痛

糖尿病も様々な身体的苦痛を出現させます。

神経障害

神経障害は有名な症状です。

異常な感覚を伴った痛みに悩まされる方もおられますが、様々な薬剤が使用可能となっています。

例えば、プレガバリンや、抗うつ薬のデュロキセチンなどが挙げられます。

いずれも、他の薬剤と同様に副作用がありますので、薬剤の性質を熟知している必要があります。

緩和ケア医は、がんの患者さんの神経の痛みに関して、上記の薬剤をよく使用しますので、使用の実態をよく理解しています。

プレガバリンではめまいや眠気、ふらつきがそれなりの頻度で起こりますので、少量から増やしてゆく配慮が肝要です。

デュロキセチンも悪心や頭痛など様々な副作用を来しえます。

効果と副作用のバランスをよく確認しながら、調整してゆくことになるでしょう。

 

糖尿病性壊疽

糖尿病が非常に悪化すると、神経障害や血管障害などから、足の壊疽(組織が壊死してしまうこと)も引き起こします。

患者さんによっては激しい痛みを訴えます。

この病態は、医療用麻薬でも緩和が難しい場合もあり、鎮痛薬を各種組み合わせて対応することもあります。

 

他にも、腎不全などを惹起してくるのは述べたとおりで、糖尿病が引き起こした複数の疾患の多様な苦痛症状を緩和する必要性も生じます。

 

糖尿病と心の問題

糖尿病に限らず、緩和ケアの対象疾患の、心理的側面のケアはまだまだ不足しがちです。

最近ではリエゾンといって、精神科医などの精神心理的側面の専門家も、身体疾患の専門家と協働して、精神心理的問題に対応してくれるようになっています。

ただそれが十分かというと、そうではありません。

糖尿病では心の問題も生じることが指摘されています。

「糖尿病による苦痛」を軽くするために 心の負担への対処法

 

病気に対する周囲の無理解

糖尿病のなりやすさにはかなりの個人差があり、環境因子だけではなく遺伝因子も関係しています。

単なる食べ過ぎや贅沢病といったような誤解が、まだ存在するケースもあるでしょう。

また1型糖尿病は、生活習慣等とは無関係です。

糖尿病に限らず、大人への病気の正当な教育はこれまで圧倒的に不足し、無理解に基づく安易な感想や助言で患者さんが傷つくことがあるのは、がんの場合と同様です。

参考;「がん教育が必要なのはむしろ大人」

 

毎日の自己管理のストレス

私がこれまで診療したがんの患者さん等からも聞かれた言葉です。

自由な食生活から打って変わって、糖尿病を患うとやらなければいけないことが多いです。

しばしば生きる楽しみの根幹である食を控えねばならないことは相当なストレスになります。

うつ病も発生しやすく、また「糖尿病による苦痛」を感じている患者では血糖コントロールが悪化し、HbA1cが上昇するとのことです。

 

将来への不安

糖尿病は、マネジメント次第では合併症を発症する危険性があります。

未来に対する不安感は慢性で進行性の性質を持つ疾病にすべからく共通のものです。

 

糖尿病にどう緩和ケアを行うか

「糖尿病による苦痛」を軽くするために 心の負担への対処法

によると、医療者によって電話やメールで応答する糖尿病セルフマネージメントプログラムで効果があったそうですね。

がんの患者さんの場合も、対面以後は、オンライン診療(遠隔診療)によって1年生存率が延びたという研究がありますが、

診断時からの早期緩和ケア定期受診で1年生存率が向上する【遠隔相談で】

その際も継続的な電話によるアプローチでした。

これも他の疾病と同様ですが、「完璧を目指さない」「サポートを求める」「我慢しない」などは共通の助言となり、医療者は継続的関与を通してそのような良い習慣が根付くように支援します。

もちろん患者さんの数も専門家の数も多い、極めてメジャーな病気であり、緩和ケア的なアプローチを用いた診療を行っている医師も多くいると思います。

ただ一般的に、人気のある病院・医院は1人あたりの診療時間が厳しくなりがちなので、あまり心の側面に関しては十分なケアが為されているとは限らないのではないでしょうか。

 

まとめ

糖尿病自体も様々な身体的苦痛や精神心理的な苦痛を惹起します。

また糖尿病が引き起こす疾患群も同様で、患者さんは時に相当な数の心身の症状に苦しみます。

これまでは疾病の管理が中心だった慢性病の分野にも、症状緩和と生活の質の向上の視点が注がれてきています。

我慢せずに、つらい症状は(心理的な問題も含めて)しっかりと伝えることが重要でしょう。

 

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About 大津 秀一

緩和医療専門医/緩和クリエーター。数千人の患者さんの緩和ケア、終末期医療に携わり、症状緩和のエキスパートとして活動している。著書や講演活動で、一般に向けて緩和ケアや終末期ケアについてわかりやすくお伝えすることをライフワークとしている。