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3年生存率を国立がん研究センターが発表
<国立がん研>3年後がん生存率を初公表 全体で71%/毎日新聞
がんの3年生存率を国立がん研究センターがまとめています。
がん診療連携拠点病院の院内がん登録によるがんの3年生存率(★生存率は、罹患されている方は無理に見る必要はありません。数字はすべての患者さんに当てはまるものではないためです。また年々統計は改善していっている可能性もあります)
最初のリンク(毎日新聞)のグラフをみると、がんの種類ごと、また病期(ステージ)ごとにだいぶ違いがあるのがわかります。
ひとくちにがんと言っても、その種類ごとに、あるいはステージごとに生存率は大きく変化することが理解できます。
対策のスピード感は、がん種ごとに異なる
上のような記事もあります。
同じようなことを考える人もいるものです。
ただ、短期”決戦”というのは、短期に勝敗が決するような響きがあるので、私はこの言葉を選びませんでした。
対策に、短距離走的なスピード感が必要なのか、長距離を走り切るペース配分が大切なのか、それはがんの早さの性質ごとに異なると考えられます。
ある程度の時間を乗り切れば、基本は生存率は向上する
言われているように、生存すれば生存するほど、がんで亡くなる可能性が減ります。
胃、大腸(結腸および直腸)、膵臓、肺がんでは診断からの年数が経過するにつれて5年相対生存率は高くなる。
比較的生存率が低い膵臓がん、肺がんでも、診断から5年後サバイバーの5年相対生存率は80%近い。
肝臓がんでは診断から5年後サバイバーの5年相対生存率は40%程度である。
膵臓がんや肺がんは5年を乗り切った場合、相当生存確率が高まることが統計からはわかります。
一方で、男性ならば前立腺がん、女性ならば乳がんは、予後自体は悪くないのですが、長期的にも一定の生存率を示しています。
一般的な話で言えば、すると、膵臓がんや肺がんは、対策にスピード感が必要な、スプリンター的対応が必要ながん種と言えましょう。
一方で、前立腺がんや乳がんは、心理的息切れを避け、長期をうまく乗り切るマラソンランナー的マネジメントが必要となるでしょう。
もちろんクリアーカットにここからはスプリンター、ここからはマラソンランナーとは言えません。
その中間と思われる腫瘍もあるでしょう。例えば、胃がんや大腸がんが挙げられます。
自身のがんの性質を見極めることが大切で、原発の場所はある程度の判断材料になるでしょう。
マラソンランナーは気持ちのマネジメントが肝要 専門家の力も遠慮なく借りて
マラソンランナー的な対策は、心理的な息切れを避けることになります。
もちろんセルフマネジメントも有効です。
緩和ケアなどの専門家の力を借りることは有用です。
医療者が継続的に関わることで、自分では気が付かない変化に気がついてもらえたりします。
長期的な経過においては、うつ病などを発症することもありますが、しばしば自覚されていないこともあるので、相当悪化して見出されることもあります。
有り体に言えば、「頑張りすぎず」「ほどほどに」と、抜けるところを抜くことが、長期を走り切る基本的な心構えとなるでしょう。
スプリンター的対策ではスピード感が必要 明日から変える気構えで
一方で、基本的に5年生存率があまり良くないがんは、最初が肝心です。
そしてその最初の期間を乗り切れば、前述のように、徐々に生存率は改善します。
ただそれは、自費の免疫治療を併用する、という単純な話ではありません(やって悪いわけではありませんが)。
心構えや運動、食事の改善に取り組むことが、患者さん自身にも十分できることです。
長期的対策系の腫瘍ならば、運動や食事の改善も長期的視座で取り組めば良いでしょう。
しかし短期対策系の腫瘍ならば、すぐに習慣を変えるのが大切になります。
ただそれはもちろん、少数の医療者が勧めているような、極端な食事療法を意味しません。
健康な人間にも良い食事を取ることです。
また運動や、心理状態の改善にも積極的に取り組む必要があります。
なにしろ、最初をしのげば、長く生きられる可能性があるのです。
その点ではマラソンランナー型対策とは同じにはなりえないでしょう。
スプリンター的対策とは診断時に終末期の話をすることではない
私が知る限りなのですが、膵臓がん等の専門家の中には、最初の病状説明時にすでに終末期の話をするという方もいます。
もちろんそれだけの対策が必要なこともあるのは、これまでの経験からではありましょう。
しかし誰しも、治りたいものです。
また、手術ができるような場合においては、もう治らないと決まったわけではありません。
終末期の説明も大切ですが、それよりも、生存率を高めうるような対策の話を併せてしてほしいものだと感じます。
膵臓がんの場合に、標準治療単独と、定期的な緩和ケアの受診を加えた群(早期緩和ケア群)の2群のランダム化比較試験にて、統計的な意味のある差は出ませんでしたが、
早期緩和ケア群で生存期間中央値は6.6ヶ月、対して通常群(緩和ケアを必要時受診)では5.7ヶ月と1ヶ月程度早期緩和ケア群で長かったという結果でした。
統計的に意味のある差ではありませんが、試験の設定の仕方によっては、統計的に意味のある差が出た可能性も指摘されています。
進行期膵臓がんでの早期緩和ケア介入の無作為化比較試験:終末期ケアの比較
病気の性質から考えると、膵臓がんや肺がんはとりわけ早期からの緩和ケアアプローチが重要だと考えられましょう。
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