神経内分泌腫瘍と分類
神経内分泌腫瘍は珍しい腫瘍です。
希少がんに分類されます。
その名の通り、ホルモン等を分泌する神経内分泌細胞が腫瘍となった病気です。
膵臓や直腸などの消化器系に発生するものが多く、次が肺や気管支に発生するものとなります。
ホルモンを分泌する腫瘍と、ホルモンを分泌しない腫瘍があります。
ホルモンを分泌する腫瘍では、それらの過剰による症状を来たします。
インスリノーマ、ガストリノーマ、グルカゴノーマ、VIPオーマなどが知られています。
また遺伝性のものも10%未満存在するとされています。
多発性内分泌腫瘍症1型(MEN-1)、フォンヒッペル・リンドウ病(VHL)、神経線維腫症1型(NF1)などが知られています。
神経内分泌細胞からの腫瘍でも悪性度が高いものは、神経内分泌腫瘍(NET)ではなく、神経内分泌がん(NEC)と呼ばれます。NECはホルモン産生症状が少ないです。
神経内分泌腫瘍の治療
神経内分泌腫瘍の第一選択は手術です。
内視鏡で切除することも、一般的な手術を行うこともあります。
遠隔転移があっても手術は行われることがあり、余命の延長や症状の緩和が期待できることがあります。
他に、頻度が多い転移の場所である肝臓の腫瘍に対しては、カテーテル治療やラジオ波焼灼術などの局所療法が行われます。
薬物療法としては、膵・消化管原発の神経内分泌腫瘍にはオクトレオチドやランレオチド(膵原発の場合)、エベロリムス(アフィニトール)、スニチニブ(スーテント;膵原発の場合)、ストレプトゾシン(膵原発の場合)が使用され、抗がん剤だけではなく分子標的薬や神経内分泌腫瘍にしばしば発現しているソマトスタチン受容体に作用する薬剤など、複数のカテゴリーの薬が治療に使われています。
一方で、悪性度が高い神経内分泌がんは、小細胞肺がんに性質が比較的似ていることから、同系統の治療薬(複数の抗がん剤の併用レジメン)が使用されます。
具体的には、エトポシド+シスプラチン療法(EP療法)やイリノテカン+シスプラチン療法(IP療法)が使用されています。
神経内分泌腫瘍・神経内分泌がん 症状緩和ケアセンター
私はがんの患者さんは3700人以上担当して緩和ケアの診療を行って来ました。
それなので、緩和ケア医の中でも、希少がんに属する一般には頻度が少ない腫瘍の患者さんも数多くの診療経験があります。
消化管・膵の神経内分泌腫瘍も合わせて10例程度の緩和ケア経験(進行期だけでなく末期や看取り例を含む)があります。
症状としては、肝転移が多いため、その増大とともに内臓痛が問題となり、医療用麻薬の適正な使用が必要となります。
内臓痛に関しては、ロキソプロフェンなどのNSAIDs(エヌセイズ、非ステロイド性抗炎症薬)よりも医療用麻薬のほうが緩和効果が一般に高いです。
がんの医療用麻薬の調整の専門家が、緩和ケアの専門医(緩和医療専門医)で、手慣れた医師のもとでの症状緩和治療が望ましいです。
他の症状としては、腫瘍による悪液質も顕在化し、食欲不振・体重減少等も目立つことがあります。
ホルモン産生症状を有する腫瘍の場合は、各ホルモンの過剰症状が出現するので、それらも対応が必要となります。
また膵神経内分泌腫瘍は一般的な膵腫瘍よりも、相対的には緩徐進行性で、また違った難儀さが患者さんには存在します.
さらに使用される腫瘍の治療薬も多系統にわたることから、それぞれの副作用についても熟知した医師に対応してもらう必要があります。
筆者は消化器病専門医で、消化器腫瘍に精通しており、疾病への理解と経験から症状緩和に当たっています。
私の運営する早期緩和ケア大津秀一クリニックは、希少がんの患者さんの通院割合が多く、サポートする機会が多いです。
大概の腫瘍の緩和ケア経験があるため、引き続き早期からの緩和ケアの一拠点として、希少がんの患者さんを緩和支援していきたいと考えております。