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たとえ薬が嫌いでも、がんの痛みの放置はより弊害あり

薬が好きではない方も多いでしょう。

気持ちはよく理解できます。

けれどもがんによる慢性的な痛みの場合は、その考えは捨ててください

 

自然に収まらないがんの痛みは、対処法が違う

もちろん、転移しているのではないか等の不安から、関係のない部分が痛んだりすることはあるでしょう。

それらは時間の経過や、心配の改善とともに軽減するでしょう。

けれども、そこに腫瘍があって、そして腫瘍に対してがん治療があまり奏効していない場合の痛みは、自然に見ていれば良いというものではありません。

それ以上の組織障害の歯止めとなる効果もある急性の痛みと違い、がんの慢性の痛みは放置しても百害あって一利なしとされています。

それは何の得もない痛みだからです。

ましてや、昔はそのような理解をされる方もあった、「痛みがなければ、進行がわからない」「だから痛むほうが良い」「痛むほうが生きていると実感できる」等という考えは、最近では全く当てはまりません

画像やデータで、進行は完全に把握することができます。

わざわざ痛みを我慢して、それを指標にしなくても、十分病勢を理解することは可能なのです。

それでは放置の弊害とは何でしょうか?

 

それは慢性痛が脳に影響しうること

もちろん痛みが次なる苦しみを続発されることはあるでしょう。

例えば頑迷な痛みが持続すれば、うつ病にもなりやすくなるでしょう。

けれども、ことはそれだけでは済みません。

慢性的な疼痛が持続すると、脳等の神経系も変化することが指摘されています。

参考;手術後ずっと痛い 慢性の痛みの鎮痛 痛み止めと緩和ケア

慢性の痛みをなめてはいけません(誰もなめてはいないと思いますが)。

痛みを持続的に自覚することが、脳を変化させ、さらなる手強い痛みに変えてしまう可能性もあるのです。

 

痛みの治療は初動が肝心

「薬が嫌いでも、がんの痛みの場合は嫌いにならないでください!」

ということになります。

我慢の弊害は甚大です。薬よりも痛みの放置のほうがよほど怖いです。

痛みが良くなれば薬は減らすこともできます。

痛みの放置のなれの果ての難治化では、薬の治療に抵抗性になることもあります。

脳の変化からの痛みの難治化を招かないためにも、がんで痛む場合は緩和ケアの専門家に早めに相談しましょう。

 

なお、がんの痛みの治療は医療用麻薬だけではなく、アセトアミノフェンや非ステロイド性抗炎症薬など様々な治療薬があります。まずは相談からが大切です。

動画で痛みの緩和は初動が大切なことを解説しました。ぜひご覧ください。

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About 大津 秀一

緩和医療専門医/緩和クリエーター。数千人の患者さんの緩和ケア、終末期医療に携わり、症状緩和のエキスパートとして活動している。著書や講演活動で、一般に向けて緩和ケアや終末期ケアについてわかりやすくお伝えすることをライフワークとしている。