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在宅時間が増える今「読むのに良い本はありますか?」としばしば尋ねられます。

最近だと何と言っても「最高のがん治療」ですね。

がん情報を伝えるのに最適の「最高の」執筆陣が書いていることが特徴です。

その分野で定評がある3人の執筆者が信頼の証ですが、日本医大武蔵小杉病院の勝俣範之先生が日本の現役臨床家として加わっておられることがさらに安心ですね。

一流の執筆者が揃うとこうなるのかと驚くのが、「とにかくわかりやすく、面白い!」

自信を持って勧められる本です。

先に結論を言いますと実は本書、新型コロナ対策でも役に立つ本なのです。

新型コロナで玉石混交の情報が飛び交う昨今、「情報の見極め力」が養え、がんに無縁の方にも勧められます。

ここが印象的というところをいくつか紹介します。

 

新型コロナで「◯◯が治療薬」というニュースが出た時の読み方がわかる

今は新型コロナの新しい治療を誰もが待ち望んでいると思います。

実はこれと同じ状況が、がん治療でも存在しました。

しかし実際には流れてくる情報の信頼度はまちまちです。

特に問題になるのは、「◯◯が効いた」などとして研究が紹介されることです。

研究が紹介されることは良い、皆さんもそう思いますよね?

しかしその研究が、本当に有望かどうかというのも天と地くらいの差があるのです。

例えばそのような研究が報じられた時に、以下のことをチェックすることが大切です。

・それは生物相手の研究か?

・それはヒトを対象にした研究か?

世紀の大発見のように報じられる実験が、実は上記であることは稀どころか、大変よくあることです。

そしてそのような「これが効く」の信頼度は……残念ながら高くないのです。

「最高のがん治療」では具体的な数字を挙げて記されています(p20)。

例えば実験室レベルでこれが効くのではないかと1万の新薬候補が抽出されたとします。

皆さんはそのうち薬になるのはどれくらいだと思いますか?

マウスなどで研究して、これはヒトでもいけるかも、となるのは、たったの29個になってしまいます。

すなわち、研究のニュースが出た時に「それは実験室のものかどうか?」をチェックするだけで期待度がわかります。

実験室で良い結果が出ても、動物で結果が出るのは29/10000という確率のわけですね。

しばしば日本語の記事は、実験室での研究ということが併記されていないことがあるので注意が必要です。

またこのような実験室の研究でも、平気でポータルサイトのトップページに掲載されることもあります。

「動物ではない研究」は相当話半分で捉えたほうが良いでしょう。

次にそうやってマウスなどで有望となっても、ヒト相手になると効かないということもざらにあります。

どれくらいの量が使用可能か確かめるフェーズ1では残りの29個が14個に減ります。

小規模で患者さんを対象にして行うフェーズ2では14個が3個になります。

実際に患者さんでプラセボ(偽薬)と対照して行うフェーズ3では3個が1個になってしまいます。

「動物で効きました」といっても、実際にヒト相手で効果を示すのは1/29なのです。

動物実験であることは日本語記事でもさり気なく書いてあることがありますが、これもとても重要なので見逃さないで頂くのが良いでしょう。

「効きました」という話が実験室の話ならば、実際に形になるのは1/10000。

「効きました」という話が動物の話ならば、実際に形になるのは1/29です。

今だと話題の「新型コロナに効く」という話が出た場合に、実際にはこのような割合であることを忘れてはいけません。

曲がりなりにも、アビガン(ファビピラビル)やレムデシビルはフェーズ3まで到達しているので同じではすごいのですよね。

 

早期からの緩和ケアも網羅

「最高のがん治療」では私も行っている「早期からの緩和ケア」に関してもしっかり網羅されています(p78)。

早期から緩和ケアを行うことは、具体的には早期から緩和ケア科に併診してもらうなど治療と緩和を並行することは、生存期間の延長効果で見るとその数字はノーベル賞を取った本庶佑先生が開発に携わったオプジーボの2.8ヵ月に匹敵する2.7ヵ月あるのです。

緩和ケアというと症状緩和だけのように見えますが(なお実際にはそれだけではありませんよ)、それなのに治療薬並みの効果があるということです。

もちろん生存期間の延長ばかりではなく、生活の質の向上や抑うつの減少なども期待されます。

日本では2012年よりずっと国は「がんと診断された時からの緩和ケア」を推進していますが、未だに緩和ケアを終末期になって、あるいは病気が相当進んでからのもの、治療と二者択一のものと捉えられていることがしばしばあります。一部の医療者にも残念ながらそのように昔の観念で理解されている場合もあります。

超有名がんの専門病院でも、かかりたいのに緩和ケア科にかかれないのが常態化しているとも漏れ聞きます。もちろんこれはそうすると院内の緩和ケアのマンパワーがもたないからなのでしょうけれども。私はそのような問題を解決すべく、開業して早期からの緩和ケアが誰でも受けられる、誰でも併診(並行)できる場所を設けました

このような、普通のがん本にはあまり掲載されていないことまで、予防なども含めて、がんに関係する基本的な押さえておくべき事柄はほぼ網羅されているといっても過言ではありません。

まず最初に読んでおくべきがん本と言えるでしょうし、2020年4月現在では、がんの方だけではなく、新型コロナの情報にどう向き合ったら良いか悩んでおられる方にもよいガイドとなる本だと考えます。

また、がん予防の生活は、一般の方の健康法とも重なるから、という点もあります。がん患者に良い生活習慣は当然健康人にとっても良いのです。

ウイルスに負けないためにも健康を維持することが大切です。

※関連記事 ウイルスを予防するための具体的な11の方法はこちら

これらの情報を一冊で収集できるということもあり、Amazonなどでは早くもベストセラーのようですね。

新型コロナも長期化しておりなかなか心身にも負担がかかることだとは存じます。

一方で、この機会を捉えて、読書など普段なかなかできないことに時間を割り当てるというのは様々な点で有効なことと思われます。

少しずつ新型コロナの情報もわかってきました。

自衛隊中央病院が見出した重症化の徴候である若年者は「頻呼吸」、高齢者は「SpO2の低下」などに気をつけて、引き続きそれぞれに予防対策を取っていきたいものです。

【SpO2低下を測定するパルスオキシメータは下記で紹介しています】

★記事はこちら→新型コロナウイルスとパルスオキシメーター 経皮的動脈血酸素飽和度SpO2

元々はこのドリテックのものが安く入手しやすいため、私も診療所で使っています。ただ最近は以前より入手しづらいようですね。

医療現場ではNISSEIのものがしばしば使われていますね(現在は欠品がちですね)。

ざっと見てみると4月1日現在は次の富士コンテックのものが売られている中では安価だと思います。ただ、4月4日再確認するとこちらも欠品になったようです。急速に品薄になっていますね…。下記のリンク先から入って頂くと類するものも出てくるので、それで探して頂くと良いと思います。ただ繰り返しですが、製品としての機能は高価でも安価でもそれほど変わらないと思っています(個人的見解)。そのため、確実に届く、安い、この2点で選んで良いと考えます。

特にご高齢の方、およびご高齢の方と同居のご家族、持病がある方は検討されても良いでしょう。

 

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About 大津 秀一

緩和医療専門医/緩和クリエーター。数千人の患者さんの緩和ケア、終末期医療に携わり、症状緩和のエキスパートとして活動している。著書や講演活動で、一般に向けて緩和ケアや終末期ケアについてわかりやすくお伝えすることをライフワークとしている。