イブランスとベージニオどっちが良い?
そのような質問を聞くことが増えました。
パルボシクリブ(商品名イブランス)は本邦初の選択的CDK4/6阻害薬です。
そこに新たな選択的CDK4/6阻害薬としてアベマシクリブ(ベージニオ)が加わりました。
それなので、どちらが良いか皆さん気になっているようです。
なおパルボシクリブやアベマシクリブなどの選択的CDK4/6阻害薬のメカニズムは下記です。
ホルモン受容体(HR)陽性乳がんでは、エストロゲンの刺激によりサイクリンD1が発現し、CDK4/6が活性化され、その結果として細胞周期が進行する。選択的CDK4/6阻害薬であるアベマシクリブは、1日2回連日投与される経口薬であり、CDK4/6を持続的に阻害することで、細胞周期の停止が持続し、腫瘍細胞の老化やアポトーシスがもたらされると考えられる。
イブランスとベージニオどちらが効くのか? 違いは?
正解は……
両者を比較する研究が出るまでは、確たることは言えませんね。
では何が違うのか。
パルボシクリブはCDK4と6の両方を阻害します。
そのうちCDK6の阻害が、好中球減少症により関連するとされています。
それなので、パルボシクリブには休薬期間(21日治療し、7日休薬)があります。
アベマシクリブはCDK6に対してよりCDK4を強く阻害します。
そのため、好中球減少症がパルボシクリブほどではなく、継続投与になります。
またアベマシクリブは血液脳関門を通過するとされていますね。
ただ直接比較が出るまでは、どちらの薬剤が優れているかの確たることは言えないでしょう。
副作用は先述のようなCDK4と6への作用の強さの違いから、パルボシクリブはより好中球減少症が、アベマシクリブは下痢が問題となりえます。
こんな方にはベージニオが向いている
そのような直接比較を欠く現状であるため、あくまで専門家の意見に過ぎませんが、下記のような記載もあります。
HR+ Breast Cancer: Differences Between CDK4/6 Inhibitors(英語)
For abemaciclib, it’s that aggressive cancer. It just makes sense that if you can just keep the inhibition of that target going continuously without a break, it might potentially have a slight advantage. It certainly does for abemaciclib. That’s where you see the greatest benefit, in the most highly aggressive breast cancers with short treatment-free intervals, heavy metastases, loss of the progesterone receptor, grade 3, and liver metastasis. These are the most difficult to treat with ER [estrogen receptor]–positive disease.
とあり、アベマシクリブの休薬期間がなく持続的に作用させることでの利益がある局面として「顕著な転移」「プロゲステロン受容体の欠如」「核グレード3」「肝転移」が例示されています。
まとめ
イブランスとベージニオのどちらか?
現状は上記のような情報を元に、担当医から納得いくまで情報を引き出すことが大切でしょう。