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さて、今日からお仕事の方もいらっしゃると思います。

2019年の正月も明けました。

ブログも通常運転でいきます。

 

2019年現在もまだよく理解されていない早期緩和ケア

いまだに早期からの緩和ケアはよく理解されているとはいいがたいです。

かかって頂いた方にはわかると思うのですが、高度に個別化されたサービスで、その方の困っていることや希望していることに丁寧に対応するのが特徴となります。

それなので、かかっている方によって、対応を受けてもらっている内容の種類がだいぶ異なるということはまれではありません。

目標ははっきりしています。

生活の質の向上と、根治・長期生存です。それらを並立させます。

その手段は、人によって異なるし、それに応じるのが早期緩和ケアなのです。

 

アクティブ緩和ケアの押川勝太郎先生

がん治療医であり、時代に先駆して一般向けに情報発信を開始され、今も全国各地での患者会開催や、時代の一歩前を行く治療医のYouTube発信など精力的な活動を行われているブログ『がん治療の虚実』の押川勝太郎先生のことは何度か紹介しています。

がん治療の虚実

昨年は緩和ケアの新しい概念である「アクティブ緩和ケア」を提唱されるなど、先生の今年及び今後の活動もますます楽しみです。

その押川先生が、早期緩和ケアの名は今一つピンと来ないという側面に気づかれ、このようにも言えるのではないかと動画で解説されていたのが、下記の図です。

押川勝太郎先生による早期緩和ケアの内容説明

さすがと言うべきでしょう、早期緩和ケアの中に含まれる様々な要素が多様な言いかえによって表現されています。

確かに、私の外来においても、上記のいずれかのような要素を1つかあるいは複数、提供しています。

押川先生にご快諾を頂戴し、それらを紹介することにしました。

第一夜の今日は、「がん哲学外来科」です。

 

がん・全病哲学外来

がん哲学外来は、順天堂大学の病理学の専門家(教授)である樋野興夫先生が創始された外来です。

2009年「特定非営利活動法人(NPO法人)がん哲学外来」が設立され、そのご活動で全国に広がっています。

参考;がん哲学外来とは

多くの人は、自分自身または家族など身近な人ががんにかかったときに初めて死というものを意識し、それと同時に、自分がこれまでいかに生きてきたか、これからどう生きるべきか、死ぬまでに何をなすべきかを真剣に考えます。一方、医療現場は患者の治療をすることに手いっぱいで、患者やその家族の精神的苦痛まで軽減させることはできないのが現状です。

そういった医療現場と患者の間にある“隙間”を埋めるべく、「がん哲学外来」が生まれました。科学としてのがんを学びながら、がんに哲学的な思考を取り入れていくという立場です。そこで、隙間を埋めるために、病院や医療機関のみならず、集まりやすい場所で、立場を越えて集う交流の場をつくることから活動を始めました。

「生きることの根源的な意味を考えようとする患者とがんの発生と成長に哲学的な意味を見出そうとする人との対話の場である」ともされています。

なお私も当院の開設時から、そのような外来のご要望にお応えしうることをお伝えしております。

がん哲学外来・全病哲学外来

生き方について悩んだり考えたりしているのは、がんの患者さんに限らないはずです。

私はがんに限定しない外来として、全病哲学外来も行っています

 

実はがん哲学とがん治療は不即不離

がん治療医が、がん哲学的な外来を行うことは実は重要です。

と申しますのは、生き方や価値観によって、治療を調整することが妥当であることはしばしば経験されるからです。

「どこまで治療するのか」

「治療の意味は何なのか?」

「治療で延命を受けて、生きている意味は?」

等々、がん治療を受けている方には様々な人生に関する悩みや不安、苦悩があります。

例えば、治療にいくつか選択肢がある場合に、生き方に沿った治療を選ぶことが重要で、その支援を行うべく医療者ががん哲学的なアプローチを行って治療を調整するには複数の専門領域に通じている必要があります。

「ピアニストをしているので、しびれが出る抗がん剤をなるべく避けたい」

「毛髪を失う治療だけは仕事柄回避したい」

「ホルモン治療は良いが、抗がん剤は受けたくない」

様々な生き方や要望があり、治療はそれと関わってきます。

一方で、一般臨床の現場はあまりに時間が少なく、どれくらい生き方などに踏み込んで聴取して反映するかは、主として担当医の裁量にゆだねられています。

早期緩和ケア外来は、このような生き方とがん治療の並立の支援を行います。

 

病気を糧にするために

本来、人というのは強いもので、数々の苦難を糧に変えることができます。

自分で変えられることもありますが、周囲の支えが生きてくる場合も少なくありません。

私も行っているがん哲学外来・全病哲学外来では、病気を通していろいろなことを一緒に考えるのを大切にしています。

これまでの人生での様々なことを想起し、遮られずに話すことで、大切な価値に気づかれることもあります。

対話を重視した外来を行っています。

早期緩和ケアは、病と対峙し、乗り越える心身を醸成するものであることはこれまでも紹介してきました。

早期緩和ケア外来は、がん哲学外来・全病哲学外来としての性格を持ち、オープンな場では開示しにくいことも守秘義務がある医師相手に自由に語って頂いて、病がむしろ栄養分になるお手伝いと、人生を豊かにする支援を行って参ります。

 

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About 大津 秀一

緩和医療専門医/緩和クリエーター。数千人の患者さんの緩和ケア、終末期医療に携わり、症状緩和のエキスパートとして活動している。著書や講演活動で、一般に向けて緩和ケアや終末期ケアについてわかりやすくお伝えすることをライフワークとしている。