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末期がんと痛み
末期がんの痛みはいろいろな可能性が考えられることは別記事で書いています。
余命が数日と推測されれば、それまでの「意識を落とさない緩和策」ではなく、やむを得ず「意識を低下させて苦痛緩和する策」を取る必要性も生じることは、上の記事でも解説しました。
そのため、最終末期の苦痛には、ミダゾラム(商品名ドルミカム)等の「鎮静薬」を用いることもあります。
命は鎮静薬でも縮みませんが、コミュニケーションがより困難になります。
けれども最終末期で身の置き所のない様態を示されているときは、何も薬剤を使わなくても、正常のコミュニケーションが難しくなるのが通例です。亡くなる前にモルヒネなどの薬剤を一切使わなくても意識は低下します。
末期がんと呼ばれるような状態になったら、ご家族と早め早めに必要なコミュニケーションを取っておくことが重要でしょう。
末期がんに使う鎮痛薬・痛み止め
まず重要なこととして、上述の鎮静薬の他は、特に末期でもそうでなくても使用する薬剤(鎮痛薬)は変わりありません。なお、鎮静薬と鎮痛薬は違うカテゴリーの薬剤です。
鎮痛薬としては下記などが挙げられるでしょう。
アセトアミノフェン(商品名カロナール)
副作用が少ない。ただしこと末期がん等の痛みに関しては、もともと単剤での効果はそれほど強くない。
非ステロイド性抗炎症薬(例えば商品名ロキソニンなど)
終末期は腎機能障害や出血があることも存在し、使用に一定の注意が必要。
次からは医療用麻薬です。
モルヒネ(商品名MSコンチン、オプソ、アンペック坐剤など)
モルヒネだけが副作用が強いわけではありません。
ただモルヒネは腎機能障害があると、代謝物が蓄積するため副作用が出やすく、末期は他の医療用麻薬のほうが適切な場合あり。
モルヒネだと危険や死につながりやすいということではないので、誤解しないようになさってください。2019年現在の標準的な使い方で、死期が早まることも、意識を過剰に下げることもありません。
オキシコドン(商品名オキシコンチン、オキノーム、オキファスト等)
オールマイティに使用できる。高度の腎機能障害の場合には慎重な使用が必要だが、モルヒネほどは代謝物の蓄積の問題は出ない。
フェンタニル(商品名フェントステープ、デュロテップMTパッチ、アブストラル、イーフェンなど)
腎機能障害があっても安心して使える。貼り薬なので意識が低下しても貼れてしまうため、用量調節には気をつける必要がある。
息苦しさにはモルヒネやオキシコドンほどの効果が得られにくい可能性を指摘されている。
ただし最終末期の息苦しさは、そもそも医療用麻薬では効果不十分なことも多いため、鎮静薬が必要となることがある。
その他にも鎮痛補助薬(抗てんかん薬や抗うつ薬などが属する。商品名リリカやサインバルタが代表的)がありますが、末期になると次第に内服困難になることも多いので、中止になる可能性も高いです。
痛み止めの投与経路が限られてくるので、様々な痛み止めについて広範な知識と創意工夫が必要で、その点でも緩和ケアの専門家が担当してくれていれば安心です。
まとめ
ざっと記してきましたが、専門家は本当に様々なことを考慮して、最終末期の痛み止めを選択・開始・調節しています。
その薬剤がふさわしい状況で選択されることが大切です。
しっかりと担当医や緩和ケアの医師とコミュニケーションを図り、望む水準の鎮痛が達成されてほしいと願います。