目次
がん治療はお肌の大敵
治療のためにはやむを得ませんが、肌・皮膚に影響を与えるがん治療薬は大変多いです。
しかしできる範囲で、症状を和らげることはできます。
なぜ抗がん剤治療は肌に良くないのでしょうか。
例えば旧来の抗がん剤だと、皮膚や爪ができる場所は細胞分裂が盛んなため、細胞分裂を障害する抗がん剤治療が影響するものと考えられます。汗へ排出される抗がん剤の影響や、外力が加わることで毛細血管からも抗がん剤が漏れることなども影響するとの考えもあるようです。
分子標的薬だと、標的ががん細胞だけではなく、皮膚組織の中にもあるため攻撃を受けるものと考えられます。皮脂や汗の分泌抑制に働き、それも皮膚乾燥やバリア機能に影響するようです。
つらい手足症候群
手足症候群については何度か紹介しています。
S-1 ゼローダ ネクサバール スーテント スチバーガ 手足症候群
フッ化ピリミジン系薬(カペシタビン、テガフール・ウラシル等)やキナーゼ阻害薬(ソラフェニブ、スニチニブ)等で起こります。
紅斑・腫脹などが現れ、色素沈着、角質肥厚や亀裂、びらん・潰瘍などに進展します。
皮膚を保護し、物理刺激・熱刺激を避けることや、直射日光に当たらない等がケアの方法となります。虫さされや圧迫、摩擦も避けるようにします。
お風呂でもこすらずに泡立てて流し、刺激しないことが大切です。
抗がん剤・分子標的薬による皮膚症状の塗り薬の使い方と塗る順番
さて、特にお風呂上がりは時間との勝負です。
肌が潤っているうちに保湿のケアを行うことが重要です。
よくどういう順番でケアしたら良い、あるいは薬を塗ったら良いかと尋ねられます。
このような順番でケアしましょう(塗りましょう)。
① まずはローションや化粧水等で保水を行います。
肌が潤っている間に行うことが肝要です。特にお風呂上がり等。
香料や添加物が少なく、アルコール非含有のものが良いでしょう。
② 次に保湿を目的としたヒルドイドソフト軟膏あるいは尿素軟膏(ウレパール等)を塗る
水分の保持に役立つヒルドイドソフト軟膏やウレパール等を塗布します。
③ 炎症がある部位に、ステロイド塗布
炎症がある場合には、その部位にステロイドを塗ります。
塗る量は、両手は1FTU(フィンガーチップユニット)、両足は2FTUです。
FTUはこちらに詳しいです。→1FTU(画像あり)
皮膚の厚さで吸収のしやすさが違うので、顔はロコイド等の中程度(mild)の強さのステロイド軟膏を、一般的な部位はマイザー等のかなり強力(very strong)のランクのものを、手のひらや足底はデルモベート等の最強力(strongest)のそれを用います。
炎症が強い時期はヒルドイド等を塗らずにステロイドを中心に治療することもあります。
④ 最後にワセリン
ワセリンは、被覆するような働きがあります。
それなので最後に塗って完成です。
寝る場合は、手袋や靴下をつけます(圧迫が少ないもので)。
他、腫れが強い場合は、四肢の挙上や手足の冷却が有効です。痛みも冷やすのが奏効します。
感染症を起こした場合は、ミノマイシン等の抗生剤で治療します。
まとめ
炎症が強くない時期は
ローション等で保湿→ヒルドイドソフト→ワセリン
炎症がある時期は
ローション等で保湿→ステロイド+/-ヒルドイドソフト→ワセリン
で対応となります。
そもそも分子標的薬等の薬効自体が皮膚乾燥を促すものもあるため、保湿が最重要です。
潤し、水分を閉じ込める形でケア・治療を行っていきます。
皮膚症状や手足症候群は生活の質に影響を与えるため、早くからの対策が肝要でしょう。
ぜひ上述のようなやり方で行ってみてはいかがでしょうか。