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セカンドオピニオン的な緩和ケア外来

私の専門は緩和ケアです。

がんの抗がん剤治療は、専門ではありません。

もちろん内科医時代に、自分が主治医となって様々ながんの患者さんの抗がん剤治療を、各領域の専門家と組んで、行った経験があります。

また最近まで大学病院に在籍していたので、最新の治療には常に触れる立場にありました。

それなので、一定以上の知識は当然あります。

しかも、緩和ケアとがん治療は密接に関係している領域です。

緩和ケアチーム・外来の難しさ① 病院治療との並行・抵触

吐き気や食欲不振等の消化器症状や、しびれ等の神経症状などの苦痛ががん治療自体から生じていることは少なくありません。

緩和ケア医は、ある程度以上がん治療に通じていることが、良い仕事を行う上で必要となります。

また患者さんやご家族も、緩和ケア科の診察は一般に時間をかけることもあって、治療そのものへの不安や疑問をお尋ねになることも多いです。

すると意図せず、外来がセカンドオピニオン外来のようになることがあります。

勤務していた東京の大学病院でも緩和ケア外来をしていましたが、セカンドオピニオン的な機能も持つ外来でもありました。

緩和ケア医として、病気のアセスメントや治療について改めて見解を求められること。

そこにある難しさが生じて来るのです。

 

そのアセスメントは違うんじゃないの?

このブログをご覧になっていらっしゃるような皆さんは、一般よりも情報収集に熱心で、がん治療についてもある程度以上ご存知だと思います。

それなので、「一つの身体の変調等に対して、医師ごとに見立てや、そこから言うことが異なる」ということはご存知なのではないかと思います。

一番精度が高いコメントをもらえるのが、どストライクの専門家に相談した場合で、私はそれを下記でも述べました。

アセスメントを買うことによって症状が激変する 緩和ケア

気持ちとして、医師に何でも知っていてもらいたいというものがあることは理解できます

けれども医療の進歩と深まり、情報の拡大は、それを難しくもさせました

どれくらいその領域が専門なのかによって、アセスメントの確度が変わります

かかる側としては、「医師ごとに見立ては変わりうる」ことを、好むと好まざるとにかかわらず理解しておかねば、自身が不利益を受けることになってしまいます。

そして私が様々な話を伺っていると、なかには、そのアセスメントや治療は妥当とは言えないのではないか……というものも相応にあります。

もちろん患者さんのご理解で話されますから、実際には正しいアセスメントや治療が伝えられているものの、それが受け取られていない場合もあるでしょう。

しかしそのような慎重さをもって判断しても、グレー以上の内容のアセスメントや治療に出会うこともあるのは事実です。

 

担当医への信頼というものがある

医療の難しさは、必ずしも医療の巧拙のみで判断されるというわけではない点です。

下の記事でも述べました。

緩和ケアの病院格差を国が調査予定 格差はあるでしょう

緩和ケアは患者さんやご家族の「苦痛」を扱います。

「苦痛」は客観的なデータでは計測できないところに難しさがあります。

例えば、苦痛緩和の腕はそれほどなくても、とても親切で、よく話を聴き、患者さんやご家族からの信頼は絶大という医師がいたとします。

一方で、苦痛緩和の技術はものすごいけれども、冷たく、無愛想で、あまり話を聴かず、何かにつけ断定的な言い方ばかりする医師がいたとします。

前者の医師の緩和薬の選択は今一つで、後者の医師の緩和薬の選択はいつも適切です。

では、患者さんの苦痛は、どちらが取れるでしょうか?

医療においては、プラセボ効果も発生しえます。

これが、「肝炎の治療」という客観的な領域ならば、知識・技術・経験がある医師の方が、治療成績は良くなるでしょう。

では、先ほどの緩和ケアの場合はいかがでしょうか?

はっきり言って、前者の医師のほうが「苦痛は取れる」と評判になってもおかしくないでしょう。

ある患者さんは、途中から極端な玄米菜食に打ち込みました。

独自の食事療法で有名な医師に心酔したのです。

みるみる痩せてしまいました。

このタイミングでは難しいかと思いながらも、その食事療法は妥当ではないことを伝えました。

しばらく患者さんは変わらず極端な玄米菜食を実践されていましたが、時の経過とともに、それがふさわしくないということを理解されたようで、中止されました。

そして「先生が合っていないと言った意味が、わかりました」とおっしゃいました。

そうなのです。

間違った治療であっても、それを現在進行系で信じている方に、「それをしていると、良くないかもしれません」と伝えるのは、難しいことなのです。

なかには、「いろいろな意見を聞くのも良い」とおっしゃってくださる方もいますが、しばしば、良くて「大きなお世話」、場合によっては不快なお気持ちを抱かれる方もいるようです(★もちろんそのようなことを口にする時は、伝える側も最大限に気を遣っていますが、それでもなお、あまり良い印象を与えないことがあります)。

あるいは、何を信じたら良いかわからず、不安が強まってしまうということもあるでしょう。

前提として、患者さんにとって良い情報を提供したいという思いがあります。

しかし信じていることを覆すような情報を伝えねばならないことは容易ではないのです。

皆さんは、このような時でも、正しい情報を伝えてもらいたいですか?

あるいは、行われているアセスメントや治療の結果で不利益を受ける可能性が高くても、黙っていてもらいたいですか?

 

まとめ

アセスメントを買うことによって症状が激変する 緩和ケア

でも書きましたように、専門家にかかる意味は、良いアセスメントを受けるため、といっても過言ではありません(★手術などのテクニック物は除く)。

治療はネットで調べればずらずらと出て来ます。

何を適用すべきなのか、それは正しいアセスメントに立脚します

アセスメントが正しくなければ、治療も効きません。

アセスメントが間違っていて、何ヶ月も正しい治療が開始されないようなケースもあります。

一方で、だからといって、正しいアセスメントや治療を提示することが、必ずしも患者さんにとって(その時点では)良い影響を生むとも限らず、緩和ケアに限ったことではありませんが、人を相手とする物事の容易ではなさを感じて仕事に励んでおります。

 

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About 大津 秀一

緩和医療専門医/緩和クリエーター。数千人の患者さんの緩和ケア、終末期医療に携わり、症状緩和のエキスパートとして活動している。著書や講演活動で、一般に向けて緩和ケアや終末期ケアについてわかりやすくお伝えすることをライフワークとしている。