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どこまでが延命治療かは本当に難しい

前回、延命治療について触れました。

医療費を減らすために延命治療しない・安楽死するは誤り

実は、余命が予測できる病気のほうが少ないのです。

最初から、確率が予測できるならば苦労はしません。

やっても無益ならばやらなければ良いし、回復可能性が高いならばやれば良いです。

しかし現在の医学で、まだまだその精度の高い予測が難しいのです。

そのような現状があります。

 

延命治療・終末期医療の費用の平均

延命治療の絶対的な基準はありません。

したがって延命治療そのものの費用を計算するのは困難です。

亡くなる前の医療費に関してはいくつかの研究があります。

レセプトデータによる終末期医療費の削減可能性に関する統計的考察<鈴木亘 『学習院大学 経済論集』第52巻 第1号(2015年4月)>

比較的新しい2015年の上記論文では、「死亡者1人当たりの累積総医療費が死亡前1ヶ月(当月)が66.0万円、死亡前3ヶ月が135.2万円、死亡前6ヶ月が200.2万円、死亡前12ヶ月が288.5万円」となっています。

そのうち8割以上が入院医療費だそうです。

そして年齢階級が高くなるほど終末期医療費が低くなるとのこと。むやみやたらと超高齢者に濃厚延命治療をしているわけではないことが透けて見えます。

ただどこからが治らなく、またどこからが延命なのかの明確な線引きはなく、実際線も引けないと思います。

延命治療に関しては、主観的な感じ方も影響するからです。

ただ、亡くなる前の医療費に関しては最後の1ヶ月の費用が66万円、最後の1年が288.5万円ですから、甚大な費用ではないですね。

それでも高い?

そうですね、「そのままこれを支払えば」ですね。

けれどもそうはなりません。

 

延命治療・終末期医療の費用と保険

日本は高額療養費制度があります。

これを知らない方も多いので、高額な民間の医療保険に加入してしまう方もいますね。

保険医療には負担の上限があります

下記をご覧ください。

高額療養費制度を利用される皆さまへ

69歳以下(の年収約370万~約770万円の方)の場合、80100円+(医療費-267000円)×1%が上限になり、それ以上はかかりません。12ヶ月のうち3回上記を支払うと、次からは44400円/月です。

80100円×3と44400×9を足すと、約640000円になります。

つまり実際に払うお金は、先程の”最後の1ヶ月の延命治療の費用66万円、最後の1年が288.5万円”ではなく、最後の1ヶ月は8万円+α(収入によって変わります)、最後の1年が64万円+α(同左)となります。

もちろん正確には収入等によって差異がありますが。

このように医療費は保険適応なので、上限があります。

一方で、一般病院や緩和ケア病棟・ホスピスの差額ベッド代などは、保険適応ではないのでかかります。

ただ支払いする医療費が甚大に多くないことはご理解頂けるのではないかと思います。

 

延命治療・終末期医療の費用と緩和ケア

緩和ケアも症状緩和のために薬剤を用います。

それなので、費用が増える……と心配される方もおられるかもしれません。

しかし問題が大きくなるのを予防し、不要な医療を遠ざけるため、医療費は実は減る可能性があります。

海外の研究ですが、緩和ケアの並行介入で、1回の入院で36万円減ったというものもありますね。

参考;早期緩和ケア外来が目指すもの 出費・費用の減少「トータルで安上がりに」

入院を減らすべく、末期になる前から緩和ケア医に定期的にかかるのが、費用の点でも有利な可能性があります。

 

まとめ

延命治療の費用の平均と保険と緩和ケアについてまとめました。

何が延命治療になるのかは、個々の例および各人の考え方によっても異なります。

病前も病中も、よく医療者や家族と相談して、自身に必要なものを選び取ってゆくことですし、ケースによっては自身の意思表示が困難となる場合もあるので、折に触れてよく話し合っておかれるのが大切でしょう。

参考になれば幸いです。

 

 

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About 大津 秀一

緩和医療専門医/緩和クリエーター。数千人の患者さんの緩和ケア、終末期医療に携わり、症状緩和のエキスパートとして活動している。著書や講演活動で、一般に向けて緩和ケアや終末期ケアについてわかりやすくお伝えすることをライフワークとしている。